「校長室の窓」をご覧の皆様。こんにちは。今回の臨時休業延長に伴う「一人校長カフェ」では、学校に登校できずに時間を持て余し気味の生徒の皆さんのことを意識して、まとまった時間を取ることのできるこの時期を利用して読書習慣を身に付けるきっかけとなればと思い、私自身の読書経験を記した記事を掲載しようと思います。一人でも二人でも、この記事をきっかけに本を読んでみようという気になってくれる人がいたら、とてもうれしく思います。 

今回の記事を掲載するにあたっては、岩波書店が2019年末に協力書店に配付した「芋づる式!読書MAP」を活用してみようと思います。すでに配付を終了していると思われますが、岩波書店のホームページ内の「岩波新書フェア2019『つながる ひろがる,芋づる式! 岩波新書』update」というページからダウンロードすることもできますので、よろしければ、併せてご覧ください。 

 ▼「岩波新書フェア2019『つながる ひろがる,芋づる式! 岩波新書』update」へのリンク
https://www.iwanami.co.jp/news/n32672.html

▼「芋づる式!読書MAP」とその中に取り上げられている齋藤孝著『読書力』

  さて、読書を勧める理由は人それぞれだと思いますが、私も今回の記事を掲載するにあたって改めて考えてみました。そして今回は、次の3点に整理してみました。 

① 本を通して時代や場所を越えて様々な人と出会える
② 「なぜ、どうして」の好奇心に応えてくれる
③ 芋づる式に新たな本と出会える

 (余談ですが、私は人前で挨拶をするなどの場合、話題を3点に整理するように心がけています。インターネットで調べると、「マジックナンバー3の法則」などと呼ばれる考え方があることが分かります。話題が1つや2つだと薄っぺらな感じがしますが、4つも5つも紹介すると結局は聞いてくれる人たちに何も伝わらないというのはその通りだと思い、それからは、話したいことがたくさんあってもなるべく3点に整理するようにしています。したがって今回も3点に整理してみました。思い出すと、私が教員になり立ての頃、あるベテランの先生から、「そうじ、あいさつ、5分前(=時間厳守のこと)」の3つを徹底できれば担任の指導としては十分だと言われたことがあり、実際に実践してみて、徹底することの難しさも含めてその通りだと思ったことがありますが、今振り返ってみると、これも3点にまとめられていました。ちなみに、私自身はこの考え方の存在を、アメリカアップル社の共同設立者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏のスピーチに関する本で初めて知りました。)

 本題に戻ります。1つ目は「本を通して時代や場所を越えて様々な人と出会える」についてです。多くの人がこのことに触れていると思いますが、私が心の底からその通りだと思ったのは、前回の「校長室の窓」でも触れさせていただいた、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏の本と出会い、札幌で行われた講演を実際に聴いてからでした。出口氏は『人生を面白くする本物の教養』(出口治明著、幻冬舎新書3912015年)という本の中で、「私はこれまでの人生で、『本・人・旅』から多くのことを学んできました」(同書96ページ)と記していますが、人間が学ぶ機会をたった3つの漢字(これも3ですね)で見事に表現していると感心したものです。このうち本は、過去の人とも、離れた場所にいる人とも、立派すぎて直接は会ってくれない(であろう)人とも、本を通して会うことができるという点で、とてもワクワク感を味わえます。のちほど紹介させていただく齋藤孝氏の『読書力』(齋藤孝著、岩波新書8012002年)という本の中でも、「私は本を読むときに、その著者が自分ひとりに向かって直接語りかけてくれているように感じながら読むことにしている。高い才能を持った人間が、大変な努力をして勉強をし、ようやく到達した認識を、二人きりで自分に丁寧に話してくれるのだ」(同書15ページ)と記しています。

 今は、人と会って直接話を聞くことも、旅に出て直接体験することもできませんが、本を通して様々な人から学ぶことはでき、必ずしも孤独に学んでいる訳ではないと私は考えています。それは教科書が相手であっても同じです。教科書の執筆者は、学習者が少しでも良く理解してくれるように願いながら、限られたページ数の中で言葉を吟味して文章を書いてくれているはずです。ですから、今読みたい本が手元にないときには、教科書をじっくり読むことでも良いと思います。知らない言葉が出てきたら調べ、何度読み返しても分からないことが出てきたら、学校再開後の質問に備えて、何が分からないのかを忘れないように書き留めるなどして読み進めると良いかもしれません。3週間あれば、各教科、結構な分量を読めるのではないでしょうか。

 

 2つ目は、「『なぜ、どうして』の好奇心に応えてくれる」についてです。これは課題探究的な学習を通して生徒の皆さんは体験済みだと思いますが、課題に追われて調べるというよりは、本を読むことを通して、「なぜ、どうして」の好奇心と向き合いながら探究するところが面白さであり醍醐味であると思います。今は新型コロナウイルス感染症への対応に追われていますが、私も、感染症のことを何も知らなかった自分に気付き、きちんと知りたいと思い、4月に石弘之氏の『感染症の世界史』(石弘之著、角川ソフィア文庫、2018年)という本と向き合ってみました。14世紀頃にヨーロッパをはじめとする世界各地を襲ったペストの大流行や、100年前のスペイン風邪のことなどが詳細に記されていて、インターネットやテレビからでは決して得られない知識に触れることができました。この本は今から2年以上も前に書かれたものですが、この時点で、富士フィルムホールディングス傘下の富士化学工業が開発した抗インフルエンザ薬の「アビガン」がエボラ出血熱の治療薬として使われていたことが紹介されていた(同書34ページ)のには驚きました。

 

 3つ目は「芋づる式に新たな本と出会える」についてです。私は以前から、何か1冊の本を読むと、同じジャンルの別の本を読んで、1冊目の本とは異なる見方を知ったり、本の中で紹介される別のジャンルの本を読んだり、巻末の参考文献から関心をひいたタイトルの別の本を読んだりすることを楽しんでいました。そうした中、ある本屋さんで冒頭に紹介させていただいた「芋づる式!読書MAP」が目に留まり、これは日頃自分が思っていたことと同じだと思い、(まさかこのような形で紹介させていただくことになろうなどとは夢にも思いませんでしたが)本棚にしまっていました。

 ここであれこれ説明するよりもこの読書MAPを実際に見る方が理解しやすいと思います。ただせっかくですので、今回の読書をテーマに、私自身の読書にかかわる読書MAPを作ってみましたので、紹介させていただきます。「芋づる式!読書MAP」には先ほど紹介させていただいた齋藤孝氏の『読書力』が取り上げられていますので、そこからスタートして、私の本棚に残っていた本をいくつか取り上げてみました。ここまでかなり長々と記してしまいましたので、なぜこれらの本を読んだのかについては、過去の記憶をたどりながら次回紹介したいと思います。

▼「芋づる式!読書MAP」(一部抜粋)

▼「芋づる式!読書MAP」(白マップに記入)

 本日はご覧いただきありがとうございました。

令和2(2020)512