「校長室の窓」をご覧の皆様、こんにちは。私の今朝の検温は平熱でした。ついに国の緊急事態宣言が全国に拡大されました。別途ホームページでも案内させていただきましたが、本校でも特別対応を取らせていただくことになりました。皆様のご理解とご協力をお願いします。

 さて、前回予告させていただいた「一人校長カフェ」ですが、今回は、入学式の式辞で毎年必ず触れさせていただいている天井画について紹介します。玄関に入って中央にある階段を昇ったところで天井を見上げると、天井画「ドーム…永遠を知れ」が生徒たちを出迎えてくれます。

▼天井画「ドーム…永遠を知れ」(2014年撮影)

 制作者は、北海道札幌開成高等学校6期の卒業生で日本画家の佐々木裕而氏です。佐々木先生は、1951年北海道生まれで、1970年に札幌開成高校を卒業後、東京藝術大学美術学部に入学され、1978年に同大学大学院を修了されました。

 佐々木先生はどのような思いでこの天井画を描かれたのでしょうか。まず、佐々木先生ご自身が記された「作品解説」を引用してみます。


 「校訓に因んだ作品を寄贈しよう」が最初でした。/私の担当は「空」、いろいろ考えた末、宗教建築などに多くみられる「ドーム」に模したものを天井画として新校舎に据え付けることにしました。/所謂(いわゆる)、だまし絵的な発想で。/新校舎に唯一、足らないもの、それは時を経た空気感です。/天井画は1500年代のドームを現代社会の最先端技術を駆使した空間に、とのおもいで制作しました。/空は世界にも宇宙にも過去にも未来にも繋がっています。/大きな夢を実現させるための希望のドームになってほしいと願っています。(/は改行を示す。)
(フォトブック『DOCUMENT "MONUMENT" ELEMENT』、非売品、2014、より)


 そして、この天井画を記念モニュメントとして本校に寄贈してくれたのが、札幌開成高等学校玉成会(玉成会は同窓会の名称で「ぎょくせいかい」と読みます)です。次回紹介する予定のモザイク壁画とともに2014年8月に寄贈いただきました。では、寄贈の経緯が記されている寄贈銘板の説明文を引用してみます。


 札幌開成高等学校玉成会は、北海道札幌開成高等学校が平成27年度に中等教育学校への改編、新校舎建設にあたり、次世代への教育的見地を踏まえ、本物の芸術に触れることができる環境にすることが必要であるとの考えに立ち、校訓である「山アリ 空アリ 大地アリ 永遠を知れ」の願いを込めて、記念モニュメントを寄贈することといたしました。
(校舎掲出の寄贈銘板より)


 また、玉成会の50周年記念として2014年に開催された第12回同窓会の冊子には、「芸術対談 新校舎モニュメント製作秘話」という対談記事があり、その中で佐々木氏は、次のように述べられていますので、これも引用してみたいと思います。

▼玉成会第12回同窓会の冊子(表紙)


 日本の校舎の多くは、実にシンプルなただの建物なんだよね。イタリア、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、もちろんフランスもだけど、「石」の文化なんだ。だから建物を壊さないで上手に使っていく。当然美術品も残ると。でも日本は、美術品共にすぐに壊してしまう。今回も旧校舎を50年で壊しちゃう。そんなことで、少しでもいいから新校舎にはヨーロッパの1500年代の教会のドームのようなものを建物の一部として入れたいなあと思った。そしてこれからもたくさん同窓会の皆さんが一緒になって美術品を入れていってもらいたい。校舎の中に少しでも、多くの芸術の"け"を感じさせるようなものを入れないと芸術文化を理解できる人間が育たない。学力、文化というものはいろいろ複合的なものだから、単に勉強だけできる、そんな人こそ絶対世に出てもどっかで苦労します。学校はやっぱり学び舎として何か深い、文化の香りがするものがなきゃいけない・・・と思いますね。
(『北海道札幌開成校長学校同窓会 玉成会50周年記念~第12回同窓会~』、玉成会、2014、より)


 ちなみに、校長室の資料を探してみると、設置前後の様子を撮影した写真も見つかりましたので、何枚か紹介します。

▼左の写真は天井画設置前、右の写真は設置工事中の写真(2014年撮影)
 

▼左は同じく設置工事中の写真、右は設置直後の写真(2014年撮影)

 

 芸術作品に限らず「ほんもの」に触れる機会はたくさんあると思いますが、その背景にあるものを少しでも知っていると、実際に触れたときの感じ方が全く異なると思います。10あるIBの学習者像には「知識のある人 Knowledgeable」というのがありますが、知らないことで、価値あるものだと気付かずに見過ごしてしまうこともあると思います。

 「校長室の窓」を読んでくれた生徒さんがいましたら、学校が再開して登校できるようになったら、改めて天井画を見上げてみてください。(階段から落ちないように気を付けて!)そして、もっと知りたくなったら図書館を覗いてみてください。先ほど引用したフォトブックは図書館で見ることができます。また、同窓会の冊子を見てみたい人は校長室を訪ねてみてください。IBの学習者像にある「探究する人 Inquirers」になったとき、とてもワクワクできると思います。

 本日はご覧いただき、ありがとうございました。

令和2年(2020年)4月17日