2020年度「一人校長カフェ」(2) モザイク壁画「我等あり」
「校長室の窓」をご覧の皆様、こんにちは。私の今朝の検温は平熱でした。教育委員会からの通知により、本日から学校の職場でも在宅勤務等の取組が始まり、私は午後からの時差出勤となりました。でも、日常のリズムを崩さずに、健康三原則の「睡眠」「食事」「運動」を意識して毎日過ごしたいと思います。
今回は、前回に引き続き入学式の式辞で触れさせていただいたモザイク壁画について紹介します。玄関に入るとすぐにモザイク壁画「我等あり」が目に入ります。
▼モザイク壁画「我等あり」(2014年撮影)
制作者は、北海道札幌開成高等学校10期の卒業生で、東京藝術大学美術学部教授の工藤晴也氏です。工藤先生は、1955年に北海道で生まれ、1974年に札幌開成高校を卒業後、東京藝術大学に入学され、1980年に同大学絵画科油画卒業、1982年同大学大学院美術研究科壁画修了ののち1987年から同大学で教鞭を取られ、2009年から美術学部の教授をされています。
このモザイク壁画は、2014年7月28日から8月5日にかけて、校舎内での最終制作を経て完成し、天井画とともに玉成会から寄贈されました。それでは、工藤先生がどのような思いで制作されたのか。さっそく、工藤先生ご自身が記された「作品解説」を引用してみます。
13歳から18歳までの6年間は、思春期であり人間形成にとって大変重要な時期である。自由で明るい校風の中で、心身ともに健康で豊かな個性が育まれることを願い壁画の構想を練った。
「我等あり」は、校歌1番「山あり、空あり、大地あり」2番「いつか羽ばたくその日を願い」3番「我等あり」をモチーフにしたものである。画面を5つの絵窓に分割し、左端が「山あり」、中央を挟んで「空あり」、中央が「我等あり」、右端が「大地あり」となる。中央に「我等」を配し、若者達の沸き上がるエネルギーや情熱、永遠の希望に向かって羽ばたく未来への姿をイメージした。設置場所は、1階交流スペースの壁面であり、重厚で落ち着いた色彩とともに校歌のおおらかな中にも力強く生きる姿勢をモニュメンタルに表現した。
(フォトブック『DOCUMENT "MONUMENT" ELEMENT』、非売品、2014、より)
また、前回紹介した玉成会の第12回同窓会の冊子の対談記事の中で工藤先生は、次のように述べられていますので、これも引用してみたいと思います。
「我等あり」の壁面は、交流サロンという空間であり、開成の人々が集う場でありますので、そのような環境に合う主題を考え、「将来へ羽ばたく若者たち」をイメージしました。このテーマになっているものは私も大好きな、谷川俊太郎作詞の校歌ですね「山あり空あり大地あり」という一番から始まって、2番が「街あり、国あり、世界あり・・・いつか羽ばたくその日を願い」3番は「海あり、風あり、我等あり」と。
その中の「山あり空あり大地あり」2番の「いつか羽ばたくその日を願い」3番の「我等あり」この詩の内容をピックアップして、イメージしました。
壁画は、色彩を使った面と黒色の面が交互に配置されています。その意味は、人間という生き物は表もあれば裏もある、生があれば死がある、昼があれば夜がある、自然界のプラスとマイナス、陰と陽というリズムの中で人生を送っていく、そのような意味を暗示させています。「我等あり」には、未来に羽ばたく力強さといいますか、夢をもって生きていこうという意味を込めて、構想を練りました。壁画が子供たちに勇気を与える動機となり、卒業しても絵があったなと印象に残るようなものであってほしい。個人個人の子供たちが、これからどんどん社会に出てね、伸び伸びとそれぞれの道を歩んで行く一つの応援歌みたいな、そういうものになればいいな。
(『北海道札幌開成校長学校同窓会 玉成会50周年記念~第12回同窓会~』、玉成会、2014より)
天井画と同じように、校長室の資料から、設置前の様子を撮影した写真が見つかりましたので、紹介します。
▼左は2014年春の写真。まだ階段のコンクリートはむき出し。右は校舎の落成直後の写真。いずれもまだ壁画はありません。(2014年撮影)
このモザイク壁画は、中央階段で記念写真を撮ったとき、その背景にとても映える形で写りますので、海外からのお客様をお迎えしたときの記念撮影スポットになっています。IBの学習者像の中に「コミュニケーションができる人 Communicators」というのがあります。特に1年生の皆さんは、「このモザイク壁画は何を意味しているの?」と尋ねられたとき、いつか英語で説明できるようになるといいですね。
なお、この壁画は、『タイルの本』という専門誌の2014年10月号でも紹介されました。壁画内にある工藤先生のサインも紹介されています。興味のある人は、学校が再開して登校できるようになったら探してみてください。また、『タイルの本』も校長室にありますので、興味のある人は訪ねてみてください。
▼上で紹介した専門誌の該当ページ。プロの写真が撮るととてもきれいです。
本日はご覧いただき、ありがとうございました。
令和2年(2020年)4月20日