四年生、一年生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんを心から歓迎します。只今の意思表明、その表情や声の大きさなど、みんなそれぞれに個性が感じられました。そんな個性豊かな皆さんと一緒に、本日の開校式を迎えられたこと、とてもうれしく思います。

本校は、五十有余年の歴史と伝統を誇る開成高校を引き継ぎ、本日、開成中等教育学校としての第一歩を踏み出しました。開成高校同窓会である玉成会の皆様からは、新校舎の建設を機に、本物の芸術を通して、校訓「山アリ、空アリ、大地アリ、永遠を知れ」の精神をしっかりと伝えていきたいとして、OBの佐々木裕而(ささきゆうじ)さんと工藤晴也(くどうはるや)さんが製作された記念モニュメントをいただきました。おかげさまで、日々本物の芸術に触れながら自分自身を振り返ることができる最高の環境となりました。関係の皆様に、心から感謝申し上げます。

また本日は、上田市長や町田教育長をはじめ、本校の開校にご尽力いただいた方や本校の応援団の方々、歴代開成高校の関係者の方々や地域の皆様、教育委員会の皆様など、たくさんの方が祝福に駆け付けてくださいました。ご来賓の皆様、本日はご多忙な中、御臨席を賜り、ありがとうございます。併せて、心より感謝申し上げます。

 さて、四年生、一年生の皆さん。いよいよ待ちに待った新しい学校生活が始まります。まだ誰も経験したことがない札幌市立の中等教育学校を私たち教職員と一緒になって作り上げていくという、未知への挑戦のスタートです。

 この未知への挑戦において指針となるのが学校教育目標です。みなさん、ステージに向かって左側の額をご覧ください。「わたし、アナタ、min-na そのすがたがうれしい」。本校の学校教育目標が力強い書で表現されています。この書は、開成高校の書道の柏先生が、思いを込めて書いてくれた芸術作品です。

みなさんは、この学校教育目標を見て何を感じますか。ここで学校教育目標を哲学してみましょう。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、生涯にわたって、人間がよく生きることを追い求めました。彼は、人間が最も人間らしく生きるには、「知を愛する」こと、つまり「学び続ける」ことが大切と考え、周りの人々が「無知の知」に気付くよう問答をして歩きました。「無知の知」とは、自分は知らないことがたくさんあると自覚するということです。人は、知らないことを自覚しているからこそ、もっと知りたいと思い、学び続けることになるというわけです。

これからみなさんが生きていく社会は、変化の激しい社会と言われています。情報化、グローバル化が益々進み、世界との距離は時間的にも空間的にもどんどん近くなっていきます。まだ誰も経験したことのない未知の社会の到来です。では、私たちは、その中で直面する様々な課題といかに向き合っていけばいいのでしょうか。その課題に対する正解はどこにもありません。ないからこそ、わたし一人だけで考えるのではなく、アナタと話し合い、みんなで正解を作り上げていく必要があります。しかし、社会が変われば、一旦作り上げた正解も、たちまち役に立たなくなってしまいます。変化の激しい社会に生きていくということは、常に正解を見直していくことが不可欠だということです。すなわち、私たちは、常に考え、学び続ける存在であることを求められているといえます。

奇しくも、今から二千四百年以上前の古代ギリシャでソクラテスが説いていた、人としてよく生きることが、現代の私たちに求められているともいえるのです。

本校は、このような時代の要請に正面から応えていくために開校しました。本校では、学校生活のあらゆる場面において、年齢も文化も興味・関心も多様な皆さんが協働し、自ら課題を見つけ、探究し、答えを見いだしていくことを全面的に支援していきます。そのキーワードが、課題探究的な学習です。四年生の皆さんは、スーパーサイエンスハイスクールとスーパーグローバルハイスクールの取組を通して、一年生の皆さんは、国際標準である国際バカロレアの教育プログラムを通して、この課題探究的な学習に取り組みます。

課題探究的な学習が展開されている本校では、周りの人と意見を闘わすことで、お互いに、自分なりの意見が深まり変わっていく経験をすることでしょう。日々わたしが、あなたのおかげで、みんなのおかげで、変わっていける。でも、どうしても変わっていかないものも見えてくる。それこそがわたしの個性であり、いいところもあれば、若干、残念なところもある。あなたがいて、みんながいたことで、わたしの個性が見えてくる。みんな違うからこそ、唯一無二のわたしを好きになることができる。そんな学校生活の中では、自然と「うれしい」という感情が湧いてくるのではないでしょうか。

 さあ、生徒の皆さん、是非、この学校教育目標が日々実現している学校を共に作っていきましょう。

保護者の皆さん、是非とも、子どもたちが学校教育目標に謳っている生徒のすがたを実現できるよう、私たち教職員とともに、その環境を整えていきましょう。

終わりになりますが、本校の教育を進めていくためには、地域の皆様をはじめ、本日ご臨席を賜りました皆様のご支援、ご協力が不可欠であります。今後とも、本校に対するご理解のほどをどうぞよろしくお願いいたします。皆様のお力を借りながら、一歩一歩着実に新たな学校づくりに取り組むことを決意し、式辞とさせていただきます。

平成二十七年四月八日

市立札幌開成中等教育学校 校長 相沢克明