5ドルの挑戦・・・令和4年度始業式校長講話
皆さん、おはようございます。
依然として、新型コロナウイルス感染症の終息が未だに見えず、今日の着任式や始業式は放送で行うことになり残念でなりません。今年こそは、コロナ禍を考えることなく、生徒の皆さんが通常の学校生活を送れるような状況になることを願っています。
さて、新学期に当たり、唐突ですが、1つ問題を出します。封筒の中に5ドルが入っています。「2時間でできるだけ増やせ」というのが問題です。ルールは次のとおりです。「この課題に当てられる時間は水曜日の午後から日曜日の夕方までです。この間、計画を練る時間はいくら使ってもかまいませんが、いったん封筒を開けたら、2時間以内にできるだけお金を増やさなければなりません。実際にどのようなことをしたのかを1枚のスライドにまとめ、日曜日の夕方に提出し、月曜日の午後に3分間で発表してもらいます。」というものです。
これは、アメリカのスタンフォード大学で実際に学生に出された課題です。1つのクラスをいくつかのチームに分け、チームごとに課題に取り組みました。
このような課題を出すと、「宝くじを買う」とか「ラスベガスに行く」という人が出てきます。こういた人たちは、それなりのリスクをとって大金を稼ぐという、ごくごく低いチャンスにかけています。次によくあるのは、5ドルを元手にして材料や道具を揃え、「洗車サービスをする」とか、アメリカ的ですが「レモネード・スタンドを開く」といった答えで、使ったお金よりも多少儲けようという人たちです。
しかし、チームのほとんどは、できるだけ多くの価値を生み出そうと、課題に真剣に向き合い、常識を疑った結果、豊かな可能性に気づいたとのことです。
この話は、2010年に阪急コミュニケーションズから出版されたスタンフォード大学のティナ・シーリグ教授の「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学 集中講義」の冒頭に書いてあるものです。
ここでは金額だけを教えます。封筒の5ドルが何と650ドルになったとのことです。どのように650ドルにしたのかは、ここではあえてお話しませんが、書籍にも書いてありますし、インターネットでも見ることができますので、ぜひ調べてください。そんなことをしたのかと、常識にとらわれない、豊かな発想がそこにはありました。
この「5ドルの挑戦」の話には、「常識を疑え」とか「常識にとらわれない」という言葉が出てきます。「常識」とは、岩波書店の広辞苑第6版によると、「一般人が持ち、また持っているべき知識」となっています。私たちは、世間一般的な知識やモノの見方やこれまで経験したり体験したりして身に付けたことなどで、考えたり判断したりしてしまいます。
一方的なものの見方や考え方ではなく、上からのぞいたり裏から調べたりひっくり返したり、そのような多面的なものの見方・考え方をすることや、ちょっとした視点を変えることによって、見えてくる世界が変わってきます。
先に出した「5ドルの挑戦」では、あるチームが「1ドルで自転車のタイヤの空気を調べます」ということをやったところ、思いのほか皆さんが喜んでいたので、途中から「お気持ちで結構です」と寄付の形に変更したところ、より多くの金額が集まったとのことです。
私たちは、物事の一面を捉えて今もっている知識を今できる方法で活用することに慣れていますが、大切なのは、これでいいのかという常識を疑うことや、これでいいのだという変化を受け入れることではないかと考えます。皆さんの日々の学習にも通じるものがあるかと思います。
「5ドルの挑戦」という話でした。この1年が生徒の皆さんにとって、充実した1年になることを願うとともに、皆さんの歩みが少しでも前進し、夢の実現に近づく1年にしてください。
令和4年(2022年)4月8日
校 長 宮 田 佳 幸