三方よし・・・後期始業式校長講話
皆さん、おはようございます。
今日から後期が始まりました。6年生のDP生は今月末からDP取得に向けた外部試験が始まり、また、大学入試共通テストを受ける6年生についても、来年1月のテストに向けて、最終的な準備をしていくことになります。後期は、それぞれの仕上げの時期になってきます。
モノの値段がだんだんと上がってきました。先日、NHKを見ていたら、10月に値上げをする予定の食品や飲料は6500品目を超えると言っていました。原料価格の高騰や原油高、そして円安が重なったためとのことですが、例えば、500mlのペットボトルの飲料水は10月1日出荷分から希望小売価格140円が160円になっているとのことです。2人以上の世帯で1か月あたり平均5730円、年間では平均6万8760円の負担増と、民間信用調査会社「帝国データバンク」では試算しています。
そのような世間の状況の中での後期のスタートですが、前回の「利他の心」の話の続きとして、今回は「三方よし」という話をしたいと思います。
江戸時代から明治時代にかけて、日本には三大商人と呼ばれる三つの商人がいました。大阪商人、伊勢商人そして近江商人ですが、この近江商人の近江とは現在の滋賀県にあたるところですが、彼らは地元の特産品を全国各地に売ることで発展していきました。近江商人の家訓には、「正直で誠実な商業活動に励む」、「商売先の他の地域の人々を大切にして、私利をむさぼることのないように心掛ける」といった内容のものがたくさんあり、近江商人は次のような実践をしたと言われています。
まず、売り手の利益を優先することなく、買いに来てくれたお客さんにまず喜んでもらえるような商品を提供する。その後、得た利益で、学校や橋といった社会が求めているものを建設する。そのサイクルを繰り返すことで、お客さんが買ってうれしい、社会がうれしいが繰り返される。そして、企業自体の信用が増え、買い手が増えることで企業成長や従業員のやりがいにもつながる*1。
この「買い手よし」、「世間よし」、「売り手よし」を「三方よし」と言っていますが、中で特に重要なのは「世間よし」です。直接の相手だけではなく、第三者の利益にも心を配ることが三方よしの要点です。現在の企業のCSR活動(企業の社会的責任)の源流ともいわれています。
この三方よしを実践している企業が数多くあり、その一つに株式会社良品計画があります。皆さんも知っている「無印良品」を運営している企業です。その企業理念を「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じよい暮らしと社会」の実現に貢献するとしています*2。良品計画では、2018年2月に地域活性化を目指す「ソーシャルグッド事業部」を立ち上げ、2020年7月に新潟県上越市で、無印良品の店舗を新幹線の幹線道路沿いではなく市街地に置くことで、街自体の活性化を目指し、2021年2月には山形県酒田市に、シャッター通りの店舗を利用し、空き店舗を減少させること、地域観光客の増加を目指しているとのことです*1。
皆さんは様々なことを学んでいますが、身に付けた学び方、学んだことなどは、この先どのようにしていくのでしょうか。自分だけのものとして終わるのか、それとも、三方よしのように、第三者の利益につながるものとして貢献していくのか。皆さんはどのように考えますか。
今回は三方よしというお話でした。値上げの10月。メーカー、小売り、消費者の「三方よし」の状況にはなっていませんが、値上げの要因となっている様々なことが、コロナ禍と併せて、早く鎮静化することを期待したいところです。さあ、後期が始まりました。最初にお話ししたように、後期は仕上げの時期です。生徒の皆さんには、それぞれの学びを積極的に進めてほしいと思います。