2025年度の3年生を対象に、百人一首を題材にした古典探究の授業を実施しました。
 
ここまでの歩み
 
単元の流れ
STEP1.『小倉百人一首』の中から「お気に入りの一首」を選び、その魅力を紹介するスライドを作成する。
STEP2.グループ内で発表する。
STEP3.Google Classroomで他の人のスライドを閲覧する。
STEP4.「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」(小野小町)を英訳する。
STEP5.「お気に入りの一首」を英訳する。
STEP6.百人一首を題材にした入試類似問題に取り組む。
STEP7.短歌を作る。(東洋大学「現代学生百人一首」に応募)
 
STEP5(4時間)
 前次の内容(小野小町の英訳)を踏まえて、STEP1~3で選んだ「お気に入りの一首」を英訳しました。(2時間)
 
 それをもとに、「英訳 百人一首大会」を開催しました。(2時間)
【流れ】
①スクリーンに1人ずつ英訳が表示される(60秒)
➁和歌一覧から、該当する和歌がどれかグループで相談する
③該当すると思われる和歌の番号をワークシートに記入する
④全体終了後、もう一度確認したい和歌があれば申し出る
⑤正解発表
⑥グループにいるメンバーの英訳にコメントを記入する
⑦その他に「気になる英訳」を選び、マナビサンクスカードを記入する
⑧マナビサンクスカードを渡しに行く

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 チーム対抗の熱い戦いが繰り広げられました。
 教員が想定していた以上に、生徒の百人一首に対する感度が高く、多くのチームが正解を導いていました。

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 授業の前半はゲーム感覚で取り組んだことによって白熱した時間になりましたが、後半は配付された「生徒英訳一覧」から他の生徒の英訳とその解説を読み、静寂な状況で学びを深めていった様子が印象的でした。
 
 なお、この授業は保護者の方にも案内し、参観形式で実施しました。参観された保護者の方からは、
 
◆参観できる機会をいただき、非常にありがたかったです。生徒たちが想像力豊かに英訳できる力にも驚かされました。短い歌の含みを持った言葉からのメッセージの受け取り方や強調して表現したい箇所もそれぞれで楽しく、ロマンティックでキュンキュンと響く英訳ばかりでした。我が子が選んで訳した歌も意外性があり感心し、知ることができて良かったです。難しく捉えがちな古典を、様々な角度から興味を引き出して学べる授業をありがとうございます。
 
◆日本人として慣れ親しんだ「百人一首」と英語がどう結び付くのだろうと興味深く参観させていただきました。生徒達がグループに分かれ、英訳した一首に対する日本語訳をあてる場面では皆が身を乗り出して和気あいあいと取り組んでおり、楽しさが伝わってきました。いつの間にか私もスライドを目で追っており、一緒に参加したような気持ちになっていました。個性があふれ、瑞々しく味わい深い生徒達の英訳、日本語訳は本当に心に残るものになりました。とても素晴らしい授業を観させていただきまして感謝しております。どうもありがとうございました。
 
とのコメントをいただきました。
 
 最後に、STEP4,5の振り返りとして、教科横断型学習の感想をGoogleフォームで回答してもらい、Chat GPTでまとめたところ以下の結果となりました。
 
◆質問1:「和歌を英訳し、共有する」という学習をした生徒の振り返りを要約してください。
1.英訳の難しさと工夫
•和歌の雰囲気や韻を保ったまま訳す難しさを多くの生徒が感じた。
•単語選びや時制、リズムなど細部にまで工夫を凝らす必要があり、「作者の意図」や「背景」を深く考えることが重要だと気づいた。
•一語一語に込められた意味を損なわないよう、翻訳前に日本語の解釈を丁寧に行ってから英訳した生徒もいた。
2.他者との比較から得た学び
•同じ和歌でも解釈の違いにより全く異なる英訳になることを実感。
•他の生徒の英訳を見て、新しい表現や考え方を学び、視野が広がったと感じた。
•共有やフィードバックの場で、自分の改善点や翻訳の工夫を知り、再挑戦したことでより納得のいく英訳ができたという声も。
3.言語横断の面白さ・発見
•和歌を英語にする過程で、日本語と英語の文化や構造の違いに気づいた。
•古文と英語が交わることで、国語・英語両方への理解が深まったという意見が多かった。
•日本語の婉曲表現や省略、掛詞などは英語では再現しにくく、逆に英語には独自のリズムや表現があることにも気づいた。
4.自己の成長と発見
•「想像力」や「表現力」が鍛えられたと感じた生徒が多く、英語の語彙力や文法理解の向上にもつながった。
•百人一首に対する印象が変わり、「面白く、美しい日本文化」だと感じたという生徒も多数。
•学びを通して、「勉強そのものの価値」や「言葉の力」に対する実感が得られたという振り返りもあった。
 
◆質問2:生徒の満足度はどれほどのものでしたか。
 生徒の振り返りから読み取れる満足度は全体的に高かったと考えられます。以下の点がその根拠です。
1.「楽しかった」「面白かった」「新鮮だった」という感想が複数見られた
•生徒たちは「普段の英語の授業とは違って楽しかった」「国語と英語がつながっているのが新鮮だった」など、学びの新しさや楽しさを強調しています。
2.難しさをポジティブに捉えていた
•多くの生徒が「難しかったけれど面白かった」「悩みながらも達成感があった」と書いており、単なる困難ではなく、挑戦として前向きに取り組めていたことがうかがえます。
3.他者との比較や共有から学びを実感していた
•「他の人の訳を見て、自分では思いつかない表現に気づいた」「自分の訳を改善したくなった」という反応があり、活動を通じた成長感や刺激が満足感につながっています。
4.国語や英語に対する関心が高まったという声
•「言葉って面白い」「またやってみたい」など、今後への意欲や興味が芽生えたことも、満足度の高さを示す重要な指標です。
 「難しくて納得いく訳ができなかった」「もっと時間があればよかった」といった声もありましたが、いずれも前向きな振り返りの中での反省や改善点として語られており、不満というよりは向上心の表れと捉えられます。
 総合すると、生徒の多くはこの授業に対して知的な刺激と学びの充実感を感じており、満足度は高かったと評価できます。活動を通じて得られた「楽しさ」「発見」「成長の実感」が、その満足感の中心にあるようです。
 
◆質問3:これらの内容から、国語と英語の教科横断型学習の意義はどのようなものだと考えられますか。
1.言語の本質的理解の深化
•多くの生徒が、和歌を英訳する過程で「言葉の意味」「文法の違い」「訳すことの難しさ」を実感しており、これは国語(日本語)と英語の両方に対する言語感覚や構造理解の深化につながっています。
2.文化・感性の再認識と再発見
•和歌という日本独自の詩型を英語で表現することで、自国の文化や美意識を見つめ直すきっかけになっています。また、異なる言語で再構築する過程が、日本文化の再発見と英語を通じた文化理解を同時に促しています。
3.創造的思考と表現力の育成
•直訳では伝わらないニュアンスや情感を、どう英語で表すかを工夫する過程で、創造性と表現力が鍛えられています。また、比喩・省略・リズムなど和歌特有の技法を英語で再構成する中で、詩的表現に対する感受性も育まれています。
4.主体的・対話的で深い学び
•生徒自身が和歌を選び、意味を解釈し、英語で表現し、他者と比較・共有する活動を通して、教科の枠を超えた主体的・対話的な学びが実現されていました。
 国語と英語の教科横断型学習は、単なる語学力の向上にとどまらず、文化理解、表現力、創造性、そして主体的な学びを促す教育的価値が高い学習形態であるといえます。
 
 
 この後はSTEP6の読解(定期考査)とSTEP7の創作(短歌を作る)を経て、単元全体の振り返りへと移ります。
 
⇒STEP6,7へ(近日ホームページで公開)
 
市立札幌藻岩高等学校国語科 對馬光揮