51期3年生のKさんが企画者となり、教員志望の生徒たちで集まって自主勉強会「教師について語り合おう」の第5回を開催しました。

 最終回となる第5回は「本質観取~教育の目的~」を行いました。

 本質観取とは哲学対話の1つで、物事の本質を見出していく思考法を指します。「みんな違ってみんないい」で終わらせずに、「これなら皆が納得できる」という”共通了解”を他者とともに作り上げていくものです。

 本質観取の主な手順は次の5点です。

①テーマについての問題意識(気になること、考えたいこと)を共有する。
②具体的な体験(わたしの“確信”)に即して考えたり、事例を出し合ったりする。
③出し合ったものをふまえて、共通の特徴(キーワード)を引き出す。
④共通の特徴の関連性や根拠を考え、最も核心をついた言葉(必要不可欠なキーワード)で、その本質を一文で表す(○○とは~~である)🔑類似する言葉や反対の言葉などと比べてみると、より本質が浮かび上がる
⑤まとめの一文が最初の問題意識を考える際の”拠り所”になるものか吟味する。🔑違和感があれば手順を少し戻って考え直す
 

 最終回のテーマを「教育の目的」として、本質観取に取り組みました。

①テーマについての問題意識を共有する

 生徒たちからは「いじめが後を絶たない」「教育において男女格差や地域格差が生じている」「教員の時間外労働が問題になっている」など様々な問題意識が挙げられました。

②具体的な体験に即して考えたり、事例を出し合ったりする

 実体験として、どのような時に”教育の意味”を実感したか、生徒に投げ掛けました。
 すると、生徒たちからは「毅然とした指導を受けた時」「”言葉の重みを理解してほしい”と顧問に言われた時」「与えられた場所や環境の中で自分の変化に気付いた時」「主体的に学んでいる時」といった意見が挙がりました。

③出し合ったものをふまえて、共通の特徴を引き出す

 その中で何度も出ていたのが「成長」というキーワードでした。そこで、「成長」と「教育」の関係性について考えてもらいました。
 「”成長”の中に”教育”があるのか」「”教育”の中に”成長”があるのか」「”成長”と”教育”は部分的に重なっているのか」という視点からそれぞれ考えてもらうと、「”成長”を目指さない”教育”はない」「”自然な成長”は”教育”と区別される」といった意見が挙がりました。

④共通の特徴の関連性や根拠を考え、最も核心をついた言葉で、その本質を一文で表す

 そこで、「○○な成長/○○する成長」を軸に”教育の目的”を捉えてみることにしました。ある生徒が”教育”を「教わる」と「育む」に分けて考え出したので、それぞれの特徴を洗い出しながら、各自で「教育とは、~~成長し、~~するためにある。」という一文を考えることにしました。
 その結果、「選択肢を増やす」「型にはまらない(自分らしさ)」「豊かになる(人生・未来・社会)」「全ての人」というワードを盛り込みたいということになり、最終的には次の言葉を”共通了解”として結論付けました。
教育とは、
全ての人が自分らしく「成長」し、
選択肢を増やすことによって、
人生や未来を豊かにする力を身につけるためにある。

⑤まとめの一文が最初の問題意識を考える際の”拠り所”になるものか吟味する

 「いじめはこの”共通了解”の真逆にあるものだから、やっぱりあってはならない」「様々な格差はこの”共通了解”の実現にマイナスな影響を与えてしまうので、格差をなくしていく必要がある」「この”共通了解”を実現させるためには、教員にも”余白”が必要だ」というように、問題意識を考えるための”拠り所”として機能することを確認しました。
 

 自分が目指す「教員像」や「やりたい授業」がこの”共通了解”に向かっていることを噛みしめながら、自分たちの夢の実現に向けて、改めて各自の思いを述べてもらいました。

 全5回の自主勉強会を終えて、生徒たちからは

「大学に行ってからも使える、”良い先生”になるための学びができました。教科は違うけれど、たくさん意見を交換できて嬉しかったです。」

「最初の自分は軸がブレていたけれど、こういう機会を通して自分が何をやりたいのかが明確に見えてきた。自分の思いに芯を持たせて話せるようになった。」

「素直に楽しかったです。これまで友達とこういったことを語る機会がなかったので、他教科の意見やインクルーシブ教育など、自分が考えてもいなかったことに触れることができました。自信を持ちながら、パッションを大切にして先に進みたいです。」

「自分が教育で大切にしたいことは前からあったけど、”言葉だけ”みたいな感じになっていた。けど、こうやって皆の考えを知ったり、自分の思いを伝えたりして、心から”これを大切にした先生になりたい”と思えるようになった。途中で投げ出さずに最後までこの自主勉強会に参加した人なら、絶対に進路を実現できるはず!」

といった感想が寄せられました。

 対話を重んじた学びを通して、日々成長していく生徒たちの姿が印象的な自主勉強会でした。

市立札幌藻岩高等学校 對馬光揮