第五回卒業証書授与式式辞
もうすぐ二十四節気の一つである「啓蟄」ですが、冬ごもりから目覚めた虫たちも、あまりにも多い今年の雪に驚くのではないでしょうか。しかし、例年になく大雪に見舞われた今年の冬ではありますが、「啓蟄」の時期を迎え、時折差し込む日差しや吹く風も温かさを感じるようになり、冬から春へと確実に季節が変わってまいりました。
本日、このような晴れの佳き日に、旅立ちの日を迎えられた五期生の皆さん、卒業、おめでとうございます。また、保護者の皆様には、この日を迎えられましたことに心からお祝いを申し上げます。
さて、本校は、育てたい生徒像に「六年間の連続した学びを生かし、札幌で学んだというアイデンティティを持ちながら、将来の札幌や日本を支え国際社会で活躍する、知・徳・体のバランスのとれた自立した札幌人」を掲げて開校しました。「自立した札幌人」は札幌市の教育が目指す人間像を示したものですが、ここでいう「札幌人」とは「様々な課題解決に果敢に立ち向かっていく資質を有する人間の在り方」を表現したものです。
六年前、本校に入学を果たした五期生の皆さんは、この自立した札幌人の育成のもと、学校教育目標「わたし、アナタ、min-na そのすがたがうれしい」の考えを踏まえ、当時はあまり知られていない国際バカロレア(IB)の教育プログラムにより、着実にそして確実に、IBが目指している十の学習者像に迫っていきました。また、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定による様々な国内外の研修プログラムや他の学校の生徒との交流に参加することなどしながら学びを深めていきました。
本校は全国の公立の学校として初めてIBの認定校になり、皆さんは新しい学びをしっかりと受け止め、その成果は私たち教職員の知らないところでも大きく花を開いたのではないかと思っています。本校では、様々な挑戦する機会がありますが、その扉は決して向こうから開くことはありません。その扉を自ら開ける者だけがそのことに挑戦することができます。SSHに関する様々な研修の機会に積極的に参加した皆さん、社会の課題に向き合い自らその課題解決を図ろうと地域などに果敢に飛び込んでいった皆さん、コロナ禍の中海外の学校と積極的につながろうとした皆さんなど、大人の私たちにも及ばないその積極的な行動力に敬意を表するとともに、私たち教職員の期待以上の成果をもたらしてくれたことに、皆さんを誇らしく思います。
文化の違いや考え方の違いをはじめとした世界の広さを実感するとともに、自らの存在の小ささを感じることもあったかもしれません。しかし、大切なのはこれからです。本校で学んだこと、そして身に付けたことをどのように生かしていくのか、それこそが真に問われていきます。足元を見れば、地域の課題があり、広域的に見れば、日本・世界の問題があります。常に常識を疑い、何が真で何が偽であるのか、真に答えのない社会とどのように関わっていくのか、どう生きていくのか。学びはここで終わるのではなく、まだまだ続きます。
繰り返しになりますが、保護者の皆様には、お子様の御卒業、誠におめでとうございます。また、六年間、お子様を支えていただき重ねて感謝申し上げますとともに、本校の教育活動に御理解と御協力、御支援をいただき本当にありがとうございました。十二歳から十八歳という年齢は多感な時期であり、お子様との関わりの中で難しいこともあったかと思いますが、どのようなときでも愛情を注いでいただき、本当に感謝しております。ありがとうございました。
結びになりますが、卒業生の皆さんには、「自立した札幌人」として、身に付けた将来にわたる学び方や考え方を駆使して、日本や世界をより良いものにしていってほしいと思います。十年後・二十年後の社会で中心となって活躍するのは間違いなく皆さんです。本校での六年間の学びを終え、卒業する皆さんの今後の活躍を期待するとともに、実りある人生を歩むことを信じて、第五回卒業証書授与式の式辞といたします。
令和四年三月一日
市立札幌開成中等教育学校 校長 宮田佳幸