2026年度 toi-time(校内研修会)を開催しました
toi-timeとは
「toi-time」とは、本校で実施している対話型の校内研修会です。昨年度の歩みはこちらをご覧ください。
今年度は、「カリキュラム・マネジメントの観点から、『授業の繋がり』を学校全体で考える」ことをテーマに実施しました。
ミッション(目的と役割)
①スクールポリシーに基づいた「対話」と「協働」を重んじる教職員集団になるための学びの場
②toi-timeで話し合われた内容が本校の教育活動に組織的に還元される学びの場
第1回toi-time(5月)
第1回は「教科横断の視点を獲得する」ことをテーマに、教科毎にグループをつくり、「『奈良の大仏』をもとに、その教科の考査問題を考える」ワークを行いました。
このワークでは、次のようなアイデアが各教科から挙がりました。
国語:宗教間の違いや、比較文化論などの文章題に取り組む。
地歴公民:天然痘や地震など、大仏を造立した理由を考察する。また、いま造立するとしたら、どこに造立するべきか、地歴公民の観点から論じる。
英語:ガイドになったつもりで、外国人観光客向けの説明文を考える。
数学:三角比を用いて大仏の大きさを予測する。また、曲線の長さを導くことをねらいとして、螺髪(巻かれた髪の毛)の長さを予測する。
理科:大仏の内部が空洞か否かを判断するためには、何を調べればよいか考察する。また、写真を撮る際にフラッシュ撮影が禁止されている理由を理科の観点から説明する。
保健体育:保健分野として、大仏を造立した理由を含めて、天然痘などの感染症について考察する。また、大仏を運搬する為の筋肉量および人数を予測する。
このワークを通して、「教科毎のレンズ」が存在することを確認し、共通の対象を教科毎のレンズで捉えることによって見出される「教科の繋がり」を体感する時間になりました。
第2回toi-time(6月)
第2回は「教科横断を具体的に考える」ワークを行いました。
『教科横断型授業 デザインシート』をもとに、教科横断の具体的なアイデアを出し合っていきました。
例示したサンプル

アイデア一覧
技術の音源化・数値化・言語化 -保健体育×国語×数学-
環境負荷を食の視点から考える -家庭基礎×地理探究×論理表現Ⅱ-
ハザードマップを作ろう -地学×数学×英語-
石山通の交通量を考える -論理国語×数学×英語×地学-
アルティメットを科学する -保健体育×物理×情報-
物理で考える理想のティーバッティング -体育×物理×数学Ⅰ-
最高の睡眠とは? -保健×数学×英語-
伊能忠敬になってみよう! -日本史×数学×地学-
温暖化から考える藻岩高校の暑さ問題 -化学基礎×数学Ⅰ×地理総合-
このワークを通して、教科横断をデザインする面白さだけではなく、その難しさや、「そもそも、教科横断の意味は何なのか?」という疑問が湧き上がってきました。
第3回toi-time(7月)
第3回は、前回先生方に考えていただいたアイデアから1つの授業を取り上げ、「教科横断の意味を考える」ワークを行いました。
取り上げたのは次の授業です。
授業タイトル
技術の音源化・数値化・言語化 -保健体育×国語×数学-
概要
バレーボールの技術(スパイク・サーブ・レシーブ)の「音」を言語化した後、実際の音を測定・分析し、技術力の向上に繋げる。
単元
①保健体育:球技 ②国語:オノマトペ ③数学:データの分析・統計的な推測
育成したい力
①保健体育:言語表現とスキルのつながり ②国語:イメージの的確な言語化 ③数学:数値の分析・改善
教科アプローチ
①保健体育:バレーボールを実践して、音の共通理解を図りながら、技術の向上を検証する。
②国語:サーブ・レシーブ・スパイクを音で表現し、オノマトペの多様性を考える。
③数学:音を分析し、精度をデータ化する。
単元末課題
①保健体育:自分のプレーを撮影・録音し、『良いとき/悪いとき』の違いを比較しながら、どのような音の違いがあり、それが技能の違いとどう関係しているかを説明しなさい。
②国語:自分のプレーの音をオノマトペで表現し、なぜその表現を採用したか説明しなさい。また、その表現がどの程度他者に伝わるかを検討し、理由とともに論述しなさい。
③数学:自分のプレーの音をデータとして分析し(音量・波形・タイミングなど)、良いプレーとそうでないプレーの違いを数値的に示しなさい。
この内容を踏まえて、各グループで「単元終了時の生徒の姿」を想定して、そこから逆算して「単元を貫く問い」を考える時間を取りました。
なお、ワーク終了後にチーフより例示した「単元終了時の生徒の姿」と「単元を貫く問い」は次の通りです。
単元終了時の生徒の姿
技能の違いを「音」として捉え、その特徴を言語化・数値化することの意義や限界を理解するとともに、それらを関連付けながら技術の向上につなげることの有効性について、学習した内容をもとに説明できている。
単元を貫く問い
技能の違いを「音」として捉えた時、それをどのように言語化・数値化すれば、技術の向上につなげることができるのか?
これらのワークを踏まえて、チーフより「まとめ」が次の通り伝えられました。
教科横断の効果
この授業の核は「感覚はそのままでは共有できない」という問題意識。
保健体育だけであれば「いい音を出そう」「こう打つと強い」といった感覚止まり(再現性が低い)の学習になる可能性がある。
国語だけであればオノマトペが言葉遊びで終わる可能性がある。
数学だけであれば知識技能とその活用(思・判・表)が切り離さる可能性がある。
しかし、教科横断にすることでそれぞれの限界が浮かび上がり(保健体育:感覚だけでは共有できない)(国語:言葉だけでは曖昧)(数学:数値だけでは役立たない) 、それを乗り越えようとする学習に発展する。
この授業の場合、主観と客観の往復(感覚・言語・数値)といった、高度な思考が求められることに加えて、「なんかいい」ではなく再現性を求める力が養われる。
教科横断型授業をデザインする際の留意点
学習指導要領の目標に当てはまっているか? (教科学習として成立しているか)
教科教科学習を連携させる意味は何か?
双方の領域における理解が統合される設計になっているか?
学習したことが双方の領域に還元される設計になっているか?
まとめ
教科横断に限らず、「問い」を考えることは、授業の「意味」や「目的」を考えることに繋がる。
つまり、「良い問い」を立てることは、「学習の質」の向上に繋がる。
「問い」をベースにした教科横断は、高次の思考を誘発する学習へと発展しやすい。
そもそも、シンプルな話、教科横断は学習のコンテンツとして面白くなりやすい。
したがって、「問い」をもとに考えるカリキュラム・マネジメントは有効だと言える。
ただし、「問い」や「意味」を考え始めると、頭がいっぱいになって動き出せなくなる。
しかし、まずやってみないことには何も始まらないので、「試してみること」が教科横断のポイント。
先生方からは、「難しさを感じつつも、多様な視点に触れることで理解が深まった」「議論を通して新たな気づきや発想の広がりがあった」といった声が多く寄せられました。
特に、教科横断の意義については、「生徒の思考の幅を広げ、学びを深める可能性がある」という肯定的な意見がある一方で、「実践には工夫や無理のない設計が必要」「目的化せず、授業改善の中で自然に生まれることが重要」といった現実的な課題意識も共有されました。
また、「単元を貫く問いの設定」や「逆向き設計」の重要性、生徒の実態に応じた問いの工夫など、授業づくりの根幹に関わる視点についての学びも多く見られました。さらに、他教科の教員との対話を通して、自身の教科観を見直す契機となったという声もありました。
全体として、今年度のtoi-timeは、教員が協働して「教科横断の可能性」と「課題」の双方に向き合いながら、今後の授業実践や学校全体での取り組みを考える有意義な機会となりました。
なお、今年度最終回となる第4回(12月実施)は外部講師をお招きして、「教科横断の実際を知る」ワークを行う予定です。
研修委員会 對馬光揮
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