国際交流・姉妹校訪問

新川高校生とローズベルト高校生の集合写真
新川高校は、アメリカ合衆国・ポートランド市・ローズベルト高校と姉妹校提携を結んでいます。

ローズベルトキャンパスの概要

この高校は数年前から学校改革により、現在は3校のスモールスクールで構成され、総称が「ローズベルト高等学校キャンパス」と呼ばれています。

  ●ACT 校舎(芸術とコンピュータ工学系の学校) ●POWER 校舎(理数系の学校) ●SEIS 校舎(事務、法律、教育系の学校)

以上の3つのスモールスクールで構成され、それぞれに校長が配属されています。

ポートランド姉妹校訪問報告


■2014年 第9回

国際提携委員会 委員長  寺崎敏之


はじめに

平成元年以来25年にも渡って行われてきた姉妹校訪問は、今年度の訪問で9回を数えることになった。その事業の概略と第9回訪問団のアメリカ滞在の様子を報告していく。




1.事業の概略
(1)これまでの事業

札幌新川高校は1983年11月にローズベルト高校(アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市)と正式に姉妹校調印を行い、その後1989年(平成元年)以来、姉妹校訪問を行ってきた。予算の制約上、毎年の訪問は不可能なので3年に1度の訪問とし、生徒は在学中に1度は姉妹校訪問の機会があるように配慮して「姉妹校訪問団」派遣事業を行ってきている。

(2)これまでの派遣実績
  派遣生徒数 引率者数 派遣者計
全日制 定時制 教員 PTA
1989年 第1回 3 1 1 0 5
1992年 第2回 4 0 2 0 6
1995年 第3回 4 0 2 0 6
1999年 第4回 26 4 7 2 39
2001年 第5回 9 0 3 0 12
2004年 第6回 8 0 2 0 10
2008年 第7回 10 0 2 0 12
2011年 第8回 9 - 2 0 11
2014年 第9回 6 - 2 0 8
合計 79 5 23 2 109

2.『第9回姉妹校訪問』の概略


(1)目的: 姉妹校との四半世紀を超える交流を深め、本校生徒が異文化を体験する機会を持つ。
(2) 派遣時期:2014年9月23日(火) ~29日(月)の7日間
(3)派遣人数:8名(生徒6名、管理職1名、教員1名)

3.アメリカ滞在の様子

7日間の日程概略は次のとおりである。

 

第1日目:9月23日(火)移動日(渡米)

アメリカ西海岸の夏時間は、日本との時差がマイナス16時間である。つまり初日は24+16=40時間もある大変長い1日になる。
姉妹校訪問団8名は、保護者と校長、教頭に見送られて千歳を後にし、国内の移動も国際線も、時間に関するトラブルなしでポートランド空港に順調に到着した。
ポートランド着は日本時間の深夜1時。私たちにとって最も眠い時間が現地時間では朝9時である。事前ガイダンス通りに、機内でなるべく長く睡眠をとることができて、体調不良の生徒はいなかった。全日程を通じて体調を大きく崩す生徒が出なかったのは、第9回訪問団の誇れる点の1つである。

 

空港では旅行会社が手配してくれた現地ガイドが出迎えてくれた。私は16年前になる1999年1月の第4回姉妹校訪問でもこの女性ガイドの方の世話になっている。当時息子さんがローズベルト高校に通っていたため、その姉妹校である新川高校に親近感を持ってくださっている。今回も柔軟に順調に、1日目のガイドをしていただいた。 もう一人出迎えてくれたのが、2か月前まで本校元ALTでポートランドに戻っていたフィリーシャ先生である。生徒にはサプライズであった。この日から平日4日とアメリカ最終日の合計5日間、ずっと我々の日程に付き合ってくれた。

 

 ホテルのチェックインまでの6時間は、アメリカの大自然を味わえる場所を一か所だけ訪れ、後は街と英語に慣れる時間をとるように計画してある。 はじめに、空港からミニバスで1時間移動し「コロンビア川 渓谷」に出かける。川は深く蛇行し、スケールの大きな滝とそれを囲む山並みが美しい。また、空気が澄んでいて、機内の乾燥した閉鎖空間からここへ移動してくると、生き返った心地になる。
 

 

次に、市内の「ロイドショッピングセンター」に移動して予定より長めに自由時間を取り、班別に昼食を摂って休憩する。ここは札幌ファクトリーの数倍の広さがある。
その後は市内散策の予定だったが、雨が降っていたため予定を変更し、後日訪問する市庁舎などの主要な箇所をバスで回ってからホテルに午後3時にチェックインした。その後夕食までは自由時間である。ホテルはダウンタウン(市中心部)の大変便利の良いところに位置しているので、生徒は班行動で近隣の観光スポットを回ったようである。

 

午後6時半に夕食のためレストランに移動する。
事前研修で学習した、チップを渡す習慣を実践する機会だ。「高校生が訪れるには高価すぎずに味が良く、ポートランドを代表するレストラン」というこちらからの少しわがままなリクエストを受けてフィリーシャ先生が厳選してくれたのは、ビルの壁から突き出した魚(鮭)で有名なシーフードレストランである。

団体予約では大人がチップをまとめて払うことになって生徒の体験にはならない。その点を配慮して、生徒3名ずつで2テーブル、大人用1テーブルに分けて予約されていた。

予想以上に生徒はメニューの英語の解読に手間取り、どれが何の料理かわからないようである。フィリーシャ先生が連れてきてくれた、同じく日本でALT経験がある男性が生徒のテーブルを回って、日本語と英語で料理の説明をしてくれた。魚料理を注文した生徒は日本でも見られないような絶妙な火加減の料理を堪能した。しかし、メニューの最後に小さく載っていたビーフステーキを頼んだ生徒は、その量と味付けに圧倒された。素直に魚料理を注文するべきであった。

食後にしっかりチップを払ってからレストランを後にして無事にホテルへ戻り、ようやくこの長い第1日目の日程が終了した。

 

第2日目:9月24日(水)姉妹校訪問 ①

滞在した「パラマウントホテル」は小規模な建物である。各階のデザイナーが違い、なかには地元大学の芸術学部の学生がデザインした階もあるという。  このホテルの良い点は、利便性や新しさ以上に、朝食が他のホテルよりも早く朝6時半から始まるため、高校の登校にかろうじて間に合うことである。

 

2日目は「5時半起床、荷物をまとめて6時20分ロビー集合」のはずが、起床できたのは1人部屋の男子生徒1名だった。彼が機転を利かせて他の階の生徒を起こしてくれたおかげで事なきを得た。 各テーブルに置かれた塩とコショウで自分好みの味に整えて食べる朝食に戸惑いながらも、一行は予定通りローズベルト高校に向けて出発することができた。

 

 

ローズベルト高校まではチャーターしたバスで30分の道のりである。高速道路を下りて姉妹校が近付くと、新川生は緊張した面持ちになった。しかし、到着してバスを降りてスーツケースを運んで校内に入るとホスト役の生徒が笑顔であいさつして出迎えてくれて、生徒たちの表情がやっとほころんだ。先に学校に付いていたフィリーシャ先生も出迎えてくれた。

 

新川生はこれから2日間、ホームステイ先の生徒と1対1でペアになって授業を受けて回る。姉妹校は単位制であるため、生徒はそれぞれの進路に合わせて科目を選択し、各学年が入り混じって授業を受ける。
みんな個別の時間割にしたがってバラバラに教室を移動するので、困った場合の集合場所を日本語教諭のランカスター先生の教室に決めてから生徒たちはそれぞれの授業教室に向かった。

 

ローズベルト高校の受け入れ態勢は完璧で、我々がロビーにいるとすぐに校長と副校長が出迎えてくれた。先生方にも生徒にも、姉妹校からの訪問団の来校が伝えられていて、どの授業を見学しても歓迎された。
訪問団の生徒は安心して学校生活を経験することができたようである。鳴海副校長とフィリーシャ先生、私の3人で広大な校内を歩いて授業を見学すると、新川生は英語で説明されてもわからない点があるものの、姉妹校の生徒と仲良く授業を受けている様子で、ひと安心した。

以下、授業風景をいくつか紹介する。

 

① 日本語の授業

新川訪問団受け入れ業務を引き受けてくれたのは日本語のランカスター先生である。彼は新川生をALTのように2日間、フル活用した。
1日目の朝に新川生を数名のグループに分けると、ランカスター先生は指定した日本語の授業にはホスト生徒と別れて参加するよう新川生にお願いしていた。生徒は何度も日本語の授業に参加し、自己紹介、日本に関する質問の受け答え、漢字・会話の指導、なかにはダンスを披露させられる生徒もいて、賑やかで楽しい授業になった。

ランカスター先生のおかげで、生徒たちは日本語の授業で注目されて活躍し、多くの生徒と仲良くなることができた。英語で理解するのが大変な授業を2日間フルに受けるよりも、日本語の授業で有効活用してもらったおかげで活躍でき、良い経験を手に入れることができたのだと思う。

 

② 演劇の授業

レイン先生は女優兼演出家。立ち姿が非常に美しい。演劇の修士号を取得している。
生徒たちはギリシャ悲劇・喜劇を学んでストーリー作成の基本を学んでから、創作劇に取り組む。
ウォーミングアップで、英語の発音をイギリス式 → アメリカ南部式 → アメリカ西海岸式のものへと変えて、前回学んだ劇のせりふを輪番で言うなど、はじめから内容がかなり高度である。創作劇も面白い。生徒は真剣に演じることで授業を楽しんでいる。
私はこれまでいくつかの州で高校の授業を見たことがあるが、その中でも最高に知的で面白い授業だった。

 

③ 昼食

1日目の昼食はホスト生徒とカフェテリアで摂った。ピザ、フルーツたっぷりの巨大なヨーグルトなど、好みに応じて選ぶことができる。

当番生徒が授業を抜け出して、職員とともにランチの準備を行う。新川生の中にも、ホスト生徒と一緒に食材を並べるのを手伝った生徒がいる。食品を並べる棚は、私がいままでに見たアメリカのどの高校のものよりも大きい。生徒の評判では、ここのランチはおいしいそうである。

 

④ 歴史の授業

図書館でリサーチしている様子である。生徒はグループごとにテーマに沿って細かい項目を調べてまとめている。一番手前の生徒が新川の1年生である。
図書館の広さは本校図書館の倍以上ある。アップルのPCが10数台も備え付けられていて、日本よりも環境は非常に恵まれている。

 

 

第3日目:9月25日(木)姉妹校訪問 ②

副校長と私は朝7時にホテルを出て高校へ向かう。生徒たちはそれぞれのホームステイ先から、車、スクールバス、徒歩など様々な手段で登校する。
学校に集合して健康確認をすると、時差ボケと疲労で夕食も食べずに12時間以上寝てしまった生徒が1人いた以外は順調である。ホームステイ先も快適そうで何よりだ。ランカスター先生は本当に良いステイ先を用意してくれた。
朝食は、自分で好みのものを作った生徒もいれば、シリアルのような食べ物の味が口に合わなくて苦労した生徒もいる。異文化体験の1つだと考えておこう。
この日も生徒たちは1時間目から授業に参加した。前日とは打って変わって、顔見知りになった生徒たちが話しかけてくれるので、この日は朝からリラックスした状態で授業に臨むことができたようである。

 

① 授業風景

生徒が発言する授業が多く、その様子があまりにも堂々としているため、「とても同じ高校生とは思えない」という感想を新川生の一人が漏らしていた。
サイエンス・ウィング「科学棟」という一角に理科の教室が固まっている。
右の写真は物理の授業の様子である。実験を行って結果をグラフにまとめ、分析している。各班にアップルのPCが1台ずつ貸し出されている。

ローズベルト高校では、タブレットを持っていない生徒に対して無料で i Pad が貸し出されており、希望者は利用できるようである。また、全ての先生にPC1台とプロジェクターが与えられている。
これだけの設備があれば黒板を使わない授業が可能で、その分生徒は議論や分析を深める、考える時間を豊富に持てるようになる。(ポートランドの高校の教室からは黒板がなくなり、代わりにホワイトボードが設置されている。)
札幌とポートランドの間に、大きな学習環境の差が生じていることを感じさせられた。

 

② 昼食

2日目の昼食はピザパーティーである。新川生受け入れに関わってくれた生徒をランカスター先生の日本語の教室に招き、日本語と英語の入り混じった言葉で両校の生徒が楽しく語る時間を持つことができた。

 

 

ピザは巨大で、水の容器は1ガロン(約4リットル)入り。宅配ピザには高校割引があり、大きいのに価格は日本の1/4程度の1枚7ドルだった。ピザパーティー1つをとっても日本との違いがあって面白い。

 

③ 新川とは違う校舎の様子

体育館の床は、床を覗き込んだ自分の顔が映るほどピカピカにいつも磨きあげられている。アメリカでは生徒ではなく清掃員に校舎の掃除・手入れをしてもらうため、輝いた状態を維持できるのだと思われる。
全校集会では、両側の壁から引き出し式の観客席が伸ばされて、生徒がそこに座る。それでもバスケットコート1面分以上のスペースが残る広さがある。

 

日本の高校には見られないのが、このアメリカンフットボール場である。芝の周囲は陸上の400メートルトラックになっていて、体育で生徒が持久走をしている様子は新川同様であった。
姉妹校にはこのほかに野球グラウンド、さらには広大な庭まである。
私は3度目の訪問にして今回初めて、学校の隅から隅まで敷地を歩く機会があった。ずいぶん広い高校だとは思っていたが、とてつもなく広いことが今回初めて分かった。

 

廊下には生徒のロッカーが埋め込み式で設置されている。以前は扉が傷んで汚れているものも目に付いたが、今回は生徒による絵が全面に描かれていて、しかもセクションごとに図柄が異なっていた。
トイレのドアにも生徒による絵が描かれている。校内の雰囲気を明るくしようという意気込みが感じられた。

 

廊下の壁上段にはアメリカ各地の有力大学のぺナントが貼られている。UCLAやスタンフォード大学、ペンシルバニア大学もある。進学意欲の向上を目指していることが強く伝わってくる取り組みである。
このほかにも壁面には、成績優秀生徒の名前と評定平均値、「ハーバード大学 大学院卒」といった校長・教頭の学歴まで掲示してあって、学習に生徒の気持ちを向けていこうという雰囲気が校内に満ちていた。

 

④ 姉妹校訪問 終了

2日目の授業が終了すると、新川生はローズベルト高校の生徒とはお別れになる。美術や工作、演劇など座学ではない科目が新川よりたくさんあったおかげで、何とか2日間を乗り切ることができた。

新川生1人当たり平均で3回日本語の授業に参加して、漢字を教えたり文化を伝えあったりして交流するうちに、ホスト生徒以外にも友達の輪が広がって、下の写真のように違う講座の生徒とも仲良くなった。メールアドレスを教え合い、今でも交流が続いているようである。

 

第4日目:9月26日(金)親善訪問日

4日目はグラント高校と市庁舎を訪問する日である。
ローズベルト高校近辺にホームステイしている生徒は鳴海副校長が、遠くに分散している生徒は寺崎がそれぞれタクシーで迎えに行って、7時半過ぎにはグラントに到着していなければならない。大変あわただしい朝であった。フィリーシャ先生も現地で集合し、ペイジ・和子先生の出迎えを受けて、順調に学校訪問が始まった。

① 日本語の授業参加

授業のはじめは前時に学習した会話表現の小テストで、なかなか難しい内容だった。
ペイジ先生が事前に綿密に準備してくださったおかげで、グラント生は日本地図から札幌を見つけることができる上に、札幌の街や風物、雪まつりについても学習を済ませており、生徒たちは新川生に興味津々な様子である。
新川生が用意した札幌や新川高校紹介の写真をスクリーンに投影して説明したり、グループに分かれて日本語と英語でお互いの学校生活やアニメ、人気のある歌やグループなど、自由に会話し始めると両校生徒はすぐに打ち解けた。

この後、新川生は大量のおみやげをプレセントした。日本情緒を感じさせるお菓子、シャープペン、新川グッズなどである。これに感激したグラント生の1人が、お礼をしなければならないと考えてこの後学校を抜け出し、スーパーへ買い物に行ってしまった。幸い、先生方はおとがめなしで済ませてくれた。新川生はお返しにもらったスナック菓子よりも、その生徒の心意気と行動力に感動した。
新川生によると、グラント高校は日本語の授業のレベルも生徒の日本語力も高いそうである。いわゆる「おたく」のレベルでアニメや日本文化に詳しい生徒もいたようである。

② 複数の授業見学

グラント高校には授業参加の他に、15分程度ずつ複数授業の見学をリクエストしてあった。それに応えてペイジ先生は新川生を3人ずつ2班に分け、日系でバイリンガルの生徒をガイドにつけてくれた。これから校舎見学をしながら、1時間かけて4つの授業の見学に出かけるのである。写真の左から2人目のアクションが大きい生徒がガイド生徒である。

 

右の写真は「劇」の授業。ローズベルト高校と違って生徒が演じるのではなく、戯曲・台本の構成を学ぶことがその目的であるらしかった。生徒が書いた先生の劇画風の似顔絵やパロディー画が貼られてリラックスした雰囲気の教室の中で、レベルの高い授業が繰り広げられていた。

 

授業の形態は、ホワイトボードを使って生徒が延々とノートをとるという授業は数学以外はおそらくなかったのではないだろうか。多くの場合、先生がプロジェクター・スクリーンを使って説明し、生徒は実験やグループリサーチ、討論をするといった形式が多い点は姉妹校と共通している。 校舎見学中に校長先生と廊下でお会いした。その女性の校長先生は新川生の写真を撮ると、その場で学校のフェイスブックにアップして歓迎してくれた。今でもその写真は閲覧可能になっている。

 

 

ダンスの授業の先生は、プロのダンサー。

 

 

 

 

③ 廊下の様子

ローズべルト高校と違って、生徒用ロッカーは埋め込み式ではなく、壁から張り出している。
部活動の大会が近付いている生徒のロッカー扉には、友人が書いた応援メッセージが貼られていて、ほほえましい。
これはアメリカの他州の高校でもよくみられる光景である。Go Kana! は「がんばれ かな!」というニュアンスになる。

 

廊下のドアの梁以上の高い位置には、各年度別に部活動の集合写真が掲示してあり、その数は膨大である。上段が女子、下段が男子で、縦に同一種目を並べてある。 新川同様トロフィーを展示するガラスケースも多く設置されていた。

 

部活動勧誘や生徒が行う催し物のポスターが廊下からトイレの壁にまで貼られていた。 手が込んでいたり、逆にシンプルに訴えていたり、バリエーションが豊かで生徒が努力している様子が伝わってきて、印象的だった。

 

 

 

 

 

 

④ カフェテリア

予定では12時前にグラント高校を出てダウンタウン(市中心部)で昼食を摂り、市庁舎へ向かうことになっていた。しかし、「移動には路面電車MAXを最寄りの駅から利用して街並みを見る機会を持ってほしい。またグラントのカフェテリアを両校生徒で一緒に利用すれば楽しいし安く上がる。」とペイジ先生から提案されたので、そのように急遽予定を変更した。 広いカフェテリアでグラント生徒と会話し、7月に新川に来たケン君とマシュー君も合流するなど、楽しい昼食になった。

 

昼食後は路面電車の駅へ向かうことになっているが、急な変更だったので場所がわからない。困っていると、当日の朝転倒して足首を骨折してしまったケン君が、松葉杖ながら案内役を買ってくれた。
学校から10分離れたところにある路面電車の駅までの道のりは複雑で、彼の献身的案内がなかったらたどり着けなかったかもしれない。ケン君はお世話になった新川に恩返しがしたかったのだそうである。ここでもまた、人のつながりに助けられた。

 

映画『陽のあたる教室』(英語名 Mr. Holland’s Opus)はグラント高校を舞台に音楽教師の人生を描いた作品で、その音楽教室は必見である。その音楽教室で合唱の指導をしていたのは、グラント高校卒業生の男性教諭だった。

 

⑤ 市庁舎表敬訪問

上田札幌市長の親書をポートランド市長に手渡す使命を帯びるため英語では『ポートランド親善訪問団』でもある我々8名は、9月26日(金)の午後、ポートランド市庁舎を訪問した。 「市長のオフィス」があるのは150年もの歴史がある建築物で、市役所の職員が働くのは隣の別なビルである。

 

国際交流担当のミラモンテスさんが出迎えてくれた。9月初めに札幌を市長とともに訪問した彼は、味噌ラーメンが忘れられないそうである。

 

 

チャーリー・ヘイルズ市長がこの日不在であることは、鳴海副校長と私が、札幌に来ていた市長に9月にお会いしていた時にすでにうかがっていた。市長代理の職員に市長の執務室に案内され、ポートランド訪問の感想を話すなど、終始和やかな雰囲気で懇談が進む。新川生を代表して3年生の河野さんが英語でスピーチを行い、訪問受け入れの感謝とホームステイの感想、そして今後は自分たちが姉妹都市交流の役に立ちたいと夢を語り、拍手を受けた。最後に副校長が親書を手渡し、表敬訪問は幕を閉じた。

 

これで『姉妹校訪問団』兼『親善訪問団』の公式日程はすべて終了である。鳴海副校長のスーツケースの半分近くを占めていたおみやげも、これですべて渡し終えた。生徒は翌日、ホームステイ家族との楽しい休日が待っている。全員、大きな解放感に包まれて市庁舎を後にした。

 

 

第5日目:9月27日(土)予定なし

学校が休みのこの日は、ホームステイ先ごとに休日を過ごすことになっている。
特別なことはせず、普通の休日を経験させてほしいと事前にリクエストしてあり、生徒は数々の、貴重な体験をした。ホームステイの様子の一部を以下に紹介する。


家族と一緒に作った料理

夜にフットボールの応援

家族と一緒に作った料理

少し早いハロウィーン。カボチャのJack o’ Lanternを作成

 

生徒たちは疲労に負けず、楽しく休日を過ごすことができたようである。

 

第6・7日目:9月28日(土)、29日(日)帰国

アメリカ最終日はホームステイファミリーに空港まで送ってもらい、副校長が各家庭にお礼を述べてからお別れになる。
姉妹校のランカスター先生が厳選してくれたホームステイ先は、過去に業者を通して探したステイ先よりも家族の結びつきが強い家庭が多かったようである。
家族で一緒に時間を過ごし、平日でも家族で夕食を作る家庭がこれまでよりも多かった。通常は手料理と外食、購入したものを家で食べる割合が1対1対1なのに対し、今回は2/3が手作りの料理である。
本校の生徒がホースステイする環境としては理想的だった。また、姉妹校ということで保護者・家族の思い入れが強く、生徒は6人とも恵まれたホームステイを経験できた。
鳴海副校長は各家族に、厚く感謝の意を伝えた。

 

写真ではにこやかな生徒たちも、別れ際は万感迫って込み上げてくるものがあったようである。
この日もフィリーシャ先生は朝早くから新川訪問団を待っていてくれて、生徒たちがデルタ航空のチェックインをするのを手伝ってくれた。最後まで親身に新川のために尽くしてくれたフィリーシャ先生には一同深く感謝している。

 

フィリーシャ先生とホームスステイファミリーに見送られてポートランドを後にした帰りのデルタ航空643便内では、生徒の行動に制約はない。好きなだけ映画を見るなど、生徒は自由に時間を過ごした。 成田空港到着時にはみんな疲労していたものの、武内校長からいただいていた餞別を使って和食を味わい、元気復活である。 その後の新千歳便も予定通りの時刻に新千歳空港に到着した。家族、学校関係者の見守る中、空港ロビーで解散式を終えて、旅行の全日程が終了した。  生徒たちは帰国後に生徒個別の報告書(図書館蔵)、全校生徒配布の簡略版報告書、1階廊下の掲示、ホームページ掲載資料を作成して、「第9回姉妹校訪問」という研修をしっかり終えることができた。

 

4.おわりに

今回は様々な支援を得て、本校の生徒・引率者のみならず、姉妹校とグラント高校の生徒と先生方、その他関係者にとっても大変有意義で、実りの多い交流ができ、これ以上ないというくらい素晴らしいポートランド訪問になった。 今後も、姉妹校と本校の双方に無理のない形で、妹校交流が続けられ、太平洋の両端の札幌とポートランドの友好関係が深まっていくことを願っている

 

 

 

■~第9回ポートランド姉妹校訪問 2014~(生徒報告)

私たちは、2014年9月23日~9月29日の1週間、札幌市の姉妹都市である、アメリカのオレゴン州・ポートランドを訪れました。

札幌市とポートランドは姉妹都市として長い間、関係を築いてきました。私たち新川高校はこの関係をより深いものとするため、ローズベルト・グラント高校を訪れました。
またポートランド市庁舎に親善訪問し、札幌とポートランドの親交を深める役割も担いました。

○街並み

オレゴン州に属しているポートランドは半分以上が木々に囲まれていて自然豊かな美しい所でした。大きな公園が多くあることが印象的でダウンタウンには日本とは違うお洒落な建物が多くありました。

 

 

 

 

○食べ物

量が多く完食するのが大変なほどで、濃い味のものが多くありました。ホームステイでの朝食はスクランブルエッグ、パンケーキ、ワッフルばかりで、夕食はパスタなどの麺類を食べる家庭がほとんどでした。他にはタコスを食べたり、ご飯を食べる家庭もありました。

 

 

 

○ローズベルト高校

生徒1人1人にホストスチューデントがつき、共に様々な授業に参加しました。この学校は授業中でも廊下に出たり、何かを食べていたり自由というより、けじめがありませんでした。しかし皆フレンドリーに話しかけてくれたので、なじみやすく沢山の交流が出来ました。

 

 

 

○グラント高校

新川高校は6、7月にグラント高校から留学生としてケンとマシューを受け入れました。今回は私たち新川高校が訪れました。
グラント高校はローズベルト高校とは違い、授業に真剣で、受け身にならない活発なものでした。
校長先生に急に撮られた写真がすぐにFacebookに掲載されていて驚きました(笑)

 

○市庁舎訪問

ポートランド市庁舎を親善訪問したときには、直接市長さんにお会いすることはできませんでしたが、国際交流担当のミラモンテスさんからポートランドと札幌市がお互いの街を訪問し親交を深めてきたことなどの話を聞くことが出来ました。

 

 

○ホームステイ

2日目以降はそれぞれ別のホストファミリーと過ごしました。最初は不安な気持ちでいっぱいでしたが、ホストファミリーが温かく迎え入れてくれたので有意義な4日間を過ごすことができました。英語だけでなく日本にはない慣習や文化などホームステイしたからこそ生で感じることができました。

今回の姉妹校訪問、ホームステイを通してポートランドでの暮らしや文化、アメリカの学校について多くのことを学ぶことができました。
今まであたりまえだと思っていた慣習や考え方を変える良い機会となり、新しい価値観を得ることができました。この貴重な経験をこれからの学習や生活でいかしていきたいです。

■2011年 第8回

英語科教諭 大川 祐子


1 はじめに

ポートランド訪問は、私自身は3度目でしたが、ウィラメット川の両岸に拓けた緑に包まれ、環境や食への安全意識が特に高く、地産地消を何よりも尊び、リベラルで友好的な考え方の人々が多く暮らすポートランドは、私が米国の中でも最も好きな都市の1つです。何年経て訪れても、そこで暮らす人々は古き良きアメリカを感じさせる親しみやすさと良心に溢れており、ほっとする安らぎがあります。

今回、渡米した時期は9月下旬からの5日間でしたが、たくさんの方に支えられて訪問が実現しました。外国の学校との交流を考える時、私たちは、まず、相手側の学校制度や事情について正しい理解をする必要があります。ご存知かと思いますが、米国の高校は4年制で、3ヶ月近い夏休みの終了後、新年度が9月に始まり、6月(卒業式も含む)に終了します。日本の大学のように、生徒はカウンセラー(またはアドバイザー)と相談しながら、International Rose Test Garden卒業後の進路を見据えた授業登録を9月に行い、以降は自分がとる授業の先生の教室へ毎時間移動して授業を受けます。教員は教えることにのみ責任を有します。生徒の授業の出席状況がおもわしくない場合の保護者との対応や生徒指導は副校長が行う場合が多く、校長も教職とは必ずしも関係しない幅広い人材からリクルートされ、業績が思わしくない場合はすぐ解雇されます。日本の学校と違って、組織として国際交流の担当者が決まっているわけではなく、海外からの訪問団の来訪についてもe-mailで全職員に連絡が流されて知らされる場合がほとんどです。


Pittock Mansion新年度開始早々に海外の訪問団をホームステイまで含めて引き受けるという先方の非常に厳しい日程を考えると、ポートランド日本語イマージョン教育関係者の方々が窓口となってこちらと事前調整を進めていただけなかったなら、今回の訪問は実現されなかったと、今でも思っています。

本校生徒のホームステイ先の決定に際しては、日本語イマージョン教育親の会(幼稚園から高校4年生まで)コーディネーターのAndrea Obanaさんに、グラント高校でのホストステューデント手配及び日本語授業参加や他の授業の見学では日本語教諭Kimiko Lupferさんに、姉妹校ローズベルト高校訪問や全スケジュールの調整では教育委員会イマージョン教育担当のMichael Baconさんに、ローズベルト高校での交流ではTee KamoshitaさんとElisa Schorr副校長に、その他ポートランド札幌姉妹都市協会理事のJames Hillさんや、札幌国際プラザ多文化交流部参事の後藤道さんをはじめ、多くの方々に本当にお世話になりました。この場を借りて、心からお礼申し上げます。


Roosevelt High School出発前、本市の上田市長を表敬訪問した際、「皆さんのような若い多感な時期に異文化の人々と交流を深めることはたいへん意義がある。友達を作って文化を教え合ってほしい。」と激励していただきました。今回の交流は、生徒たちに多くの発見や感動をもたらし、英語を通して広がる豊かな可能性に気づき、奮起し、交流した意義深い研修でした。

Columbia River Gorge

故ウィリアム・フルブライト上院議員が語った名言があります。『教育交流は、「国家を人々に変える」、すなわち国際関係を人間的にすることができます。それは他のどんなコミュニケーション手段もできないことです。私は教育交流が人々の間に必ず友好的な感情をもたらすものだとは思いませんし、それを目的とすべきだとは思いません。ただ、人間として共通の感情を喚起できること、言いかえれば、他の国々に自分達が恐れる教条があると理解するのではなく、自分達の国で育った人々と同じように喜びや悲しみ、残酷さや優しさを共感できる人々が住んでいる、ということが実感できれば充分だと考えます。』

言葉の壁や文化の違いを越えて、生徒たちには人間として感じることがあった5日間でした。




2 2校の学校訪問による交流について

(1)姉妹校ローズベルト高校での交流

印象に残ったことを2つ、記憶が新鮮なうちに、以下に記したいと思います。
最初に、学校訪問についてですが、姉妹校ローズベルト高校とJMP(Japanese Magnet Program)に長年関わっているグラント高校の2校を、幸運にも、今回、訪問する機会に恵まれました。

本校の姉妹校ローズベルト高校は生徒数1600人を有し、3校舎に分かれたキャンパスが市のはずれの北部に位置しています。

学校の地下には、生徒達のために、衣服や食料