修了式

 
 本日、令和4年度を締めくくる修了式が行われました。
 校長挨拶で話したことは次の3点です。
 
 ①今後の新型コロナウイルス感染症の対応について
 ②3年生が卒業した今、1、2年生が新川高校のけん引役であること
 ③コミュニケーションについて
 
 ①では4月からは、現在の「マスク着用を推奨する」から「マスクの着用を求めないことを基本とす
る」に変わること、さらに、5月8日からは新型コロナウイルス感染症が医療的にはインフルエンザと
同じ扱いになることから、これまでの欠席や学級閉鎖に関わる特別な対応がなくなる見込みであること
を伝えました。ただし、コロナウイルス自体が消滅するわけではないため、今後も状況に応じた対策を
していくことが必要となりますので、ご家庭におかれましても引き続きご理解とご協力をいただければ
と思います。
 ②では生徒会活動や部活動に関わり、3年生から襷を受けた秋以降の1、2年生の活躍に触れ、さら
なる飛躍を期待しているということを、進路実現に関わり高い成果をあげた42期生に続いてほしいとい
う思いも込めて話しました。
 ③では最近読んだ内田樹さんの書籍から、コミュニケーションとは異なる意見と出会うことで、自分
の世界が広がったり、意見の隔たりについてやり取りすることで相手への理解が深まったり違いを認め
あったりできること、また、そうすることで自分自身が豊かになり、より複雑になれると話しました。
実は、4月の始業式の際にも、同調圧力により否定されることを怖れ、「好き」なことを「好き」と言
えない最近の風潮から、異なる意見や価値観などを受け入れる柔軟さを身に着けてほしいと話していま
した。難しいことですが、これからの社会を生き抜いていくためには、異論を受け入れる力と自分の意
見を表明する力が求められています。そのためには、心の開放が必要です。今後も手を変え品を変え、
このテーマの話を継続していきたいと考えています。
 さて、これまでの始業式・修了式では「姿勢を正して、礼」の号令がありました。しかし、総務部の
担当者と相談して、今回は号令をかけないことにしました。礼が揃わないかもしれないので、せめて事
前に予告した方がよいのでは、と心配しましたが、全くの取り越し苦労でした。私の挨拶の時も、教務
部長、生徒指導部長の挨拶の時も、整然とした奇麗な礼ができていました。「あたりまえのことでは?」
と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、意外と難しいことなのです。生徒が話す人の動作をし
っかりと見て、自発的に礼をする。指示なしでも自然な形でできたことに、生徒の育ちを感じたととも
に、先生方の日頃の指導にあらためて敬服しました。自走できる生徒が確実に育っていることを実感で
き、大変嬉しい気持ちになれた修了式となりました。
 新川高校が良き学びの場であるよう、明日からの春季休業中も、新年度に向けた準備を進めていきた
いと思います。                          
                                     令和5年3月24日
 

ありがとう42期生

 
 文部科学省から「マスクを外すことを基本とする」との通知があり、全国的に注目された高校の卒業
証書授与式ですが、3月1日に厳粛な雰囲気の中無事に挙行することができました。通知が、マスクを
外すことを基本としつつも「外すことは強制しない」という内容だったためか、見聞きする限りでは卒
業生のマスク着用率は学校により大きく異なっていたようです。本校では、大学の後期試験や家族と離
れて生活するための準備、あるいは卒業旅行等の理由から、慎重に対応する卒業生が多いのではと思っ
ていたところ、おおよそ7割程度の生徒がマスクを外して式に臨んでいました。意外にも多くの生徒が
マスクを外してくれたおかげで、私の席からは一人ひとりの引き締まった中にも喜びに満ちている表情
を見ることができました。「目は口ほどに物を言う」とは言いますが、人間の感情は目だけでなく口元
からも強く伝わることを、あらためて認識させられました。
 マスク以外の対応については「保護者等の参加人数の制限は必要ない」との通知でしたが、「座席間
に触れ合わない程度の距離を確保すること」の条件も示され、体育館がそれほど広くない本校では、保
護者の参列はやむなく1家庭1名としました。子どもの晴れ姿を両親で見たいという家庭もあったと思
いますが、やむを得ずの対応となったことをこの場でお詫びいたします。
 卒業した42期生ですが、授業の様子や学校行事の取組を見ていて、仲間とともに一所懸命取り組む
ことのできる生徒達だと感じていました。「新川生とはこういう生徒のことを言うんだよ」と、私自身
が教えられる毎日だったように思います。何といっても3年生の教室が並ぶ2階全体の雰囲気が良く、
昼休みや放課後はいつもやわらかな空気が流れていました。このことから、式辞を作成する際42期生を
どう表現すればよいだろうかと考えた時に、「温かな心」という言葉が真っ先に思い浮かび、文に入れ
ることとしました。卒業式の前日、式の予行がありましたが、生徒から「合唱をさせてほしい」という
申し出があり許可したところ、「旅立ちの日に」を歌い卒業担任団を泣かせるという一幕があったとの
こと。卒業式の朝の打ち合わせの際、学年主任の森岡先生が「予行で生徒の合唱に泣かされて、私とし
ては昨日で(やるべきことは)終わってしまった感があります。」とスピーチされ、会議室は拍手に包
まれました。(私は少し嫉妬していましたが…)さらには、生徒の代表者が「式の後、担任だけでなく、
副担任の先生も教室に来てほしい」と依頼して、各教室で担任と副担任の両名にお礼を言うセレモニー
も行っていました。すべて生徒達の自主的な行動です。
 3月1日は高校教育にたずさわる私たちにとって総決算の日でもあり、一番の喜びを感じる日でもあ
ります。42期生は式での立派な立ち振る舞いだけでなく、感謝の意を行動で示し、私たちに感動を残し
てくれました。そして、大変誇らしい気持ちにさせてくれました。
 ありがとう42期生。今後、皆さんが持てる力をいかんなく発揮し、社会の開拓者として活躍してくれ
ることを祈っています。
                                     令和5年3月9日
 

冬も頑張っています

 
 3月が近づき次第に日が長くなってきました。晴れた日などは、春を予感させるような日差しに、何
となくワクワクしている自分に気づくことがあります。毎年感じることですが、この時期は"漠然とし
た期待感で背中を押される感じ"とでも言ったらよいのでしょうか、"何かしなくては"と心が活性化す
る季節でもあります。
 「冬眠していた虫が穴から這い出る」という意味を持つ二十四節気の「啓蟄」。今年は3月6日(お
よび春分までの間)とのことですが、もしかすると、天気だけでなく、無数の生命が静から動へと向か
おうとしているエネルギーが私たちに活力を与えてくれているのかもしれません。
 さて、冬場もしっかりと学び、活動している本校生徒ですが、最近の取組の一端をご紹介します。
 はじめに3年生。基本的には家庭学習期間なのですが、国公立大学の個別試験、私立大学の一般選抜
に向けて、講習、面接・集団討論練習、体育の実技練習に、毎日真剣に取り組んできました。教室で自
習する生徒もいましたが、その集中度の高さは頼もしさを感じるほどでした。先日、国公立大の前期と
私大の入試が終わり、ひと段落つきましたが、中期や後期試験に臨む生徒もいますので、最後までしっ
かりと支援したいと思います。
 次は部活動の報告です。まず、男子ソフトテニス部が1月の全道大会の団体戦に出場しました。惜し
くも1回戦で敗れましたが、部長の木引さんがお土産を携えて大会報告に来てくれました。男子バレー
ボール部は支部大会で4位となり、2月の全道大会に出場してベスト16という結果を残しました。吹奏
楽部ではアンサンブルコンテストでクラリネット四重奏に2年生の石黒さん、石川さん、影長さん、佐
藤さんが出場し、また、管楽器個人コンテストではアルトサックス独奏に2年生の友野さんが出場し、
それぞれ金賞を受賞して全道大会に出場しました。男子ハンドボール部は1月の全道大会でベスト8、
女子ハンドボール部は準優勝に輝きました。女子は前半リードされるも、一時4点差まで追いつき逆転
が期待されましたが、そこから相手校に離されてしまい、惜しくも全国大会の出場とはなりませんでし
た。また、野球部は20年近く学校に隣接する住宅の除雪ボランティアを行っているのですが、今シーズ
ンは近隣の小学校・中学校の通学路の除雪を行ったところ、それぞれの校長先生から「素晴らしい」と
のメールをいただきました。
 最後は平成27年度から続けている読み聞かせボランティアです。今年は2月24日(金)に新光小学
校で開催しました。事前に、北海道教育大学札幌校の幸坂先生から指導を受けた本校2年生の有志18名
が、1・2年生の児童に読み聞かせを行ったのですが、練習の甲斐があり、児童たちは目を輝かせて聴
き入っていました。読後の感想を述べあう場面では、距離を詰めて満面の笑顔で語り合う様子に、互い
に良い学びの場になっていると実感しました。例年は新川小学校でも開催しているのですが、今年度は
日程の折り合いがつかず、やむなく1校のみの開催となりました。
 味もそっけもない報告となりましたが、厳しい雪や寒さの中でも、このように本校生徒は着実に前進
しています。
 いよいよ明日は卒業証書授与式。3年生の晴れ姿を見るのが楽しみです。
                                    令和5年2月28日
 

スカブラ

  
 「パレートの法則」と「2対6対2の法則」というものがあることを知りました。ふるさと大学「伊
予塾」塾長の大岡哲さんが中外日報で紹介されていたのですが、例えば、売り上げの80%は20%の品目
で生み出される、世界の富の80%は20%の富裕層で占められている、このことが発見者にちなんで「パ
レートの法則」と呼ばれているのだそうです。そして、これから派生したものが「2対6対2の法則」
で、組織やグループの中では非常に意欲的に働く者2割、普通に働く中位の6割、あまり働かない下位
の2割というように、「2対6対2」に分かれることが多いというもの。これは人間社会だけではなく、
昆虫の世界でも観られる現象で、面白いことに下位の2割を排除しても、新たにサボって成果の低い者
が出てきて、再び「2対6対2」に分かれるのだそうです。
 集団において全員が意欲的に働いてくれるのが理想ですが、少々息のつまる集団になる可能性があり
ます。長続きするのかな?という心配もあります。一方、皆が皆あまり働かない集団は、少々、もとい、
かなり不安であることは自明です。「2対6対2」くらいに収まっているのが、ほどほどのバランスが
とれた集団なのかもしれません。
 このようなことを考えていたところ、「スカブラ」という言葉を思い出しました。これは、かつて炭
鉱が盛んだった頃、炭鉱夫に交じってトロッコに乗るものの、石炭を掘らずにバカ話やホラ話を聞かせ
て周りを笑わせたり、お茶を出したりする仕事があり、これを生業とする人たちのことを言います。
「スカしてブラブラしている人」を略したのが「スカブラ」(なぜか私は、最近まで「スカっとブラブ
ラ」と誤って記憶していました。)なのですが、会社の業績が悪化して彼らをリストラしたところ、作
業効率が大きく下がり、今まで同じ時間でやれていた仕事が、全然できなくなってしまったそうです。
さらには、炭鉱夫たちの人間関係もギスギスしていったそうです。死と隣り合わせという過酷な職場に
あって、彼らは欠かすことのできない人たちだったようです。    
 このように、集団で何かに取り組む際は、多様性やゆとり(遊び)、一見効率的ではないもの、無用
と思われるものが大切であることが、経験的に知られています。最新鋭の機械をフルパワーで動かそう
にも、潤滑油なしではスムーズに動かすことができない、ということなのでしょうか。
 しかし、教育の場では、これを言い訳にして「一生懸命学ぶ生徒はクラスに2割いればいい」とは言
えません。結果として「2対6対2」になっているかもしれないことは、何となく実感するところです
が、これをよしとする訳にはいきません。生徒全員の学びを保証するにはどうしたらよいのかと考えて
いたところ、「個別の対応」と「底上げ」しか手はないのではないかという結論に達しました。底上げ
を果たすことで、結果として下位の2割が生じたとしても、それはあくまで新川高校での下位であって、
全体としてみると上位にある。都合の良い妄想かもしれませんが、このようなイメージ・目標をもって
本校らしい学びを実践していけたらと思っています。       
                                     令和5年2月9日
 

おばあちゃんの知恵袋

 
 時々、いわゆる業界新聞が学校に届く時があり、普段目にすることのないような記事に時間を忘れて
没入してしまうことがあります。先日、決裁箱の中に「環境市場新聞」を見つけて手にしたところ、そ
の中の「おばあちゃんの知恵袋」という見出しに目が止まり、読んでみるとこれが面白い。
 まずは雪を利用した食品の保存方法。冬の間に積もった雪を倉庫の中に貯蔵し、夏場にこの冷気を利
用して食品を保存する方法が明治時代から昭和30年代まで活用されていたそうです。これは雪室と呼ば
れ、冷蔵庫が普及するまで広く普及していたとのこと。また、収穫した野菜を雪の下に埋めて保存する
方法も紹介されていましたが、これについては越冬(雪中)キャベツなるものが販売され糖度が高いこ
とでも知られていますので、私たちにとっても身近な話です。
 前者について、そういえば同じようなもので氷室というものがあったなと思い調べてみると、「冬に
できた天然の氷を溶けないように保管するため、洞窟や地面に掘った穴の中に作った小屋のこと」と記
載されていました。その昔、夏場の氷は大変貴重だったことから、長らく朝廷や将軍家など時の権力者
が大切にしてきたものだったようです。そして、このことは氷室という文字が奈良時代の木簡に書かれ
ていることからもうかがい知ることができるとのことです。また、後者について「低温」や「糖度が増
す」という件から、理科が専門の私には、「凝固点降下」「浸透圧」という言葉が思い浮かびました。
一つの記事から、図らずも「調べ学習」「教科横断的な学び」へと広がっていたのです。
 そして、「おばあちゃんの知恵袋」は冷蔵庫における野菜の保存へと話が続きます。ここでは乾燥を
防ぐ工夫として、葉野菜はぬらしたキッチンペーパーで根元を覆い、ビニール袋に入れ袋の口を少しだ
け空けておく、白菜を丸ごと保存する場合は新聞紙でくるんで保存するのがよいと紹介されていました。
また、野菜は育つ状況と同じ向きで保存すると日持ちがよくなるそうで、使用済み牛乳パックに入れて
縦置きするのがおすすめだそうです。
 冷蔵庫の中は温度が低く飽和蒸気量が下がることから、保存しているものが乾燥していくことが知ら
れています。よって野菜の保湿のために、ぬらしたキッチンペーパーや袋で覆う必要があることは分か
ります。しかし、育つ状況と同じ向きで保存すると日持ちがよくなるというところでは、何故…?と考
え込んでしまいました。重力…維管束…。これは安易に調べて答えを見つけるのではなく、自分でじっ
くり考えてみることにしました。「探究」です。
 こうした様々な知恵を紹介しながら、記事は「食材を上手に保存することは、食品ロスの削減や環境
にやさしい暮らしにつながります。」と結びます。何と、締めは「SDGs」でした。
 学びや探究の材料は身の回りに転がっていることを実感するとともに、科学技術だけに頼り切る生活
ではなく、経験知・知恵といったものを活用した生活は、人間にやさしく環境にやさしいものだと再認
識させられました。また、学びや学校経営のヒントを得るために、これからも色々なメディアの情報に
アンテナを広げていくことが大切だと感じました。 
                                     令和5年1月30日      
 

年頭のご挨拶

 
 年が明け2023年・令和5年となりました。
 今年はうさぎ年ということで、飛びはねる、すなわち飛躍の年と言われています。また、十干と十二
支を組み合わせた六十干支では「癸卯(みずのとう)」の年にあたりますが、「癸」は十干の最後で一
つの物事が収まり次の物事へ移行していく段階、「卯」は十二支の4番目で植物の「茂」という時期を
意味するのだそうです。つまり、「癸卯」とは様々なことの区切りがつき、次へと向かっていく、そこ
に成長や増殖といった意味を持つ未来志向の年と言えます。
 今年も教職員の力を結集して、新川高校がこの言葉通りの良い年になるよう努めていきたいと思って
います。保護者と地域をはじめとする本校に関わる全ての皆様、今年も温かいお力添えをいただければ
僥倖です。
 さて、年頭の挨拶として朗報をお知らせします。昨年度、コロナ禍にあってICTを活用した授業を展
開し、学びを止めない授業を実践していることなどに対し、情報担当の天野教諭が個人として、本校が
学校として札幌市教育実践表彰を受けたところですが、今年度はこの実践に関わり天野教諭と本校教職
員一同が文部科学大臣優秀教職員表彰を受けることとなりました。教職員が生徒のために協働し、大き
な取組を行ってきたことが評価されたことに感謝するとともに、日頃から献身的に業務を果たしている
本校職員を大変誇らしく思います。文部科学省HP(https://www.mext.go.jp/content/20221226
-mxt-syoto01-000026789-2.pdf)に被表彰者名簿が掲載・公表されていますので、ご確認いただけ
ればと思います。なお、諸所の事情により参列はしませんが、表彰式は1月17日(火)に文部科学省で
行われます。表彰状が届きましたら、適切な場所に置きたいと思いますので、来校の際は是非ご覧くだ
さい。
 幸先の良いスタートとなりましたが、正直、課題は山積みです。一つひとつ丁寧にやり遂げることを
を目標に、今年も本校の教育を進めてまいります。 
 皆様、本年もよろしくお願いいたします。                 令和5年1月13日
 

平和への行動

 
 クリスマスの日の夜にMISIAさんのコンサートに行ってきました。
 圧倒的な声量と躍動感あふれるステージは、驚きと感動の連続でした。今も体のどこかにその時の余
韻が残っているように感じています。曲の中で特に印象に残ったのが、平和への祈りを込めて歌った
「希望のうた」です。MISIAさんといえば、音楽活動だけでなく、アフリカを支援する活動の他、平和
活動などにも積極的に取り組んでいることで知られていますが、こうした行動が歌に説得力を持たせて
いるのではないかと感じました。
 近年、アーティストやスポーツ選手が社会問題などに関わり行動を起こす場面が増えてきています。
例えば、先日、閉幕したFIFAワールドカップでは、反人種差別を訴えるためにイングランド代表がキッ
クオフ前に全員がピッチに片膝をつくパフォーマンスを行いました。また、カタールでの人権問題に対
し、9カ国の主将が多様性と包括性を推進する「ONE LOVE」の文字が入ったキャプテンマークを巻く
ことを計画しました。しかし、これはFIFA(国際サッカー連盟)がチームの用具に政治的、宗教的、個
人的なスローガンやコメント、メッセージを入れることを禁止していることから、実現には至りません
でした。
 このような制約はオリンピックにもあり、オリンピック憲章により、用地、競技会場、またはその他
の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガン
ダを行うことが禁止されています。これは、「人種・性別の平等」といったIOC(国際オリンピック委
員会)の理念に沿わない主張が、無秩序になされることを防ぐためです。当然、表現の自由の観点から
反論も根強く、今後、どのように議論が進んでいくかが注目されます。
 また、平和のためや差別をなくすために行動するアスリートや芸能人に対し「余計なことをせず、本
業に専念しろ」というバッシングもあります。そのため、自分にできることはないかと考え、勇気を振
り絞って声をあげたにも関わらず、心無い罵声を受けてく傷つく人もいます。様々な考えや立場がある
にしても、平和を願う人を攻撃し、争いの土俵に上げるやり方には大きな憤りを感じます。しかし、こ
のように平和のために行動することは簡単ではないのは事実で、時には逆風に抗う覚悟、つまり"平和
のために戦う"という矛盾に向き合わなくてはならない場面もあることに気づいてしまいます。
 MISIAさんがコンサートの中で訴えていましたが、争いのない平和な世の中だからこそ、歌手は自由
に歌えて、私たちはそれを聴くことができます。そして、平和だからこそ安心して暮らすことができ、
様々なことに取り組むことができます。学校教育も同様で、戦争だけでなく、自然災害、パンデミック、
事故、いじめ、差別など、子どもたちの学びを脅かす要因は数多くあり、学校教育にはこれらに適切に
対応して安全・安心を実現することが求められています。今年を振り返ると学校の危機管理に関わって、
保護者や地域の方からご意見・ご指摘をいただくことがありました。その都度、反省と改善に取り組ん
できましたが、今後も、皆さんからの助言を真摯に受け止め、子ども達のために新川高校を前進させて
行きたいと考えています。
 今年も大変お世話になりました。令和5年が皆様にとってよい年となるように祈念しています。
 
                                     令和4年12月28日
 

三送会

 
 先日、「3年生を送る会」を実施しました。 
 校内では三送会(さんそうかい)と略して呼んでいるこの行事、1、2年生にとっては、3年生に感
謝の気持ちを伝えて送り出すこと、3年生にとっては、3年間を振り返ることで高校生活に区切りをつ
け、進路に向けて前向きな気持ちになってもらうことを目的として行っています。おそらく保護者の皆
さんや私と同世代の方は「ああ、予餞会のことか」と懐かしい言葉を思い出すのではないでしょうか。
かつて、ほとんどの高校で行われていた先輩を送り出す行事。現在は、授業時数の確保・行事の精選の
ため廃止され、一部の高校にのみその名が残っている状況です。本校に着任して年間行事を確認したと
ころ、この行事があることに驚いたのですが、伝統的に部活動や生徒会活動が盛んで、上級生と下級生
のつながりが強い本校ならではの特色だと聞かされました。
 さて、今年度の三送会ですが、感染対策として3年生は体育館で、1・2年生は講堂でライブビュー
イングの形式で行う予定でしたが、諸事情のためライブビューイングは直前に中止となってしまいまし
た。 
 当日のプログラムは以下の通りです。
 1 学校長の話
 2 現生徒会長の話
 3 3年生の入学式から2年時後半までのスライドショー(入学式、見学旅行、授業の様子等)
 4 各部活動の1・2年生からのビデオメッセージ
 5 吹奏楽部の演奏(RADWIMPSの「正解」を演奏してくれました)
 6 離任した先生からのビデオメッセージ
 7 3年生の今年度のスライドショー(学校祭、球技大会等)
 8 1・2年生からの言葉
 9 3年生から後輩へ
 10 前生徒会長の話
 
 スライドショーでは入学当時の初々しい自分たちの姿を感慨深げに眺めたり、厳しい指導で知られた
懐かしの先生が映し出されるや一瞬緊張感が走ったり、3年生は思い思いに高校生活を振り返っている
様子でした。中でも部活動の後輩によるビデオメッセージは、やはり一番注目が集まり、皆の視線が一
斉にスクリーンに注がれました。女子の部活動では先輩一人ひとりに呼びかけ感謝の気持ちを述べるな
ど、ほっこりとしたものが多かったように思いました。一方、男子ではいかにも体育会らしい堂々とし
たものや、笑いの中に感謝を込めたものもありました。中でも、男子ハンドボール部は先輩方の写真を
プリントしてゴールに吊るし、それに向けてシュートをするという過激なパフォーマンスを披露しまし
た。1人1人の写真がバサッ、バサッと次々にボールで破られていく画からは、荒っぽいながらも彼ら
なりの別れの気持ちがにじみ出ているように感じました。一瞬、3年生の反応を心配したのですが、苦
楽を共にした先輩・後輩間で通じ合うものがあるようで、笑い声が起きるなど、好意的に受け止めてく
れているようで安心しました。 
 忙しい中、この行事の準備や運営にあたってくれた生徒会・放送局・写真部の皆さん、趣向を凝らし
て楽しい動画を作ってくれた部活動の皆さん、間違いなくこの会が3年生にとって高校生活の良き区切
りとなり、それぞれの進路に向かうためのエネルギーを贈ることができたのではないかと思います。終
了後、教室に戻る3年生の穏やかな笑顔を見てそう感じたのと同時に、この大切な行事を今後も継続さ
せていきたいと思いました。
                                     令和4年12月15日
 

地域とともに

 
 この度、本校の他、新川西中学校、新川小学校、新光小学校の4校で札幌市民憲章実践団体として、
表彰を受けることとなりました。表彰式は本日行われ、代表として新川西中学校の渡部校長に出席して
いただきました。
 札幌市には、地域・職域において、率先して市民憲章を普及し、市民憲章を実践する活動を行ってい
る団体・個人を表彰する制度があります。この札幌市民憲章とは、"札幌"をより豊かで明るく住みよい
まちにすることを念願して、昭和38年11月3日に市民の総意として制定されました。これは、人口増加
や都市化により、人と人との結びつきが薄れ、市民の連帯意識や公徳心が低下してきたことから市民が
毎日の生活を送るうえで、心のよりどころとなるものを市民自身の手によって作ろうという考えから、
市民各層の代表者によってつくられたものです。
 
 《札幌市民憲章》
 前章:わたしたちは、時計台の鐘がなる札幌の市民です。
 1章:元気ではたらき、豊かなまちにしましょう。
 2章:空も道路も草木も水も、きれいなまちにしましょう。
 3章:きまりをよくまもり、住みよいまちにしましょう。
 4章:未来をつくる子どものしあわせなまちにしましょう。
 5章:世界とむすぶ高い文化のまちにしましょう。
 
 私たち4校は小中高連携事業の一つとして、地域清掃を目的とし、新川通さくら並木のゴミ拾い(4
月初旬)や新川中央公園・新光公園の落ち葉拾い(11月初旬)を毎年実施しており、この活動が約7年
間にわたって行われていることが評価されたと伺っています。ちなみに今年は、新型コロナの影響によ
り地域で行っているさくら並木のゴミ拾いには参加できませんでしたが、落ち葉拾いについては例年通
り実施することができました。様子を見に行ったところ、「校長先生も落ち葉を拾おう」と児童に手を
引っ張られ、彼らのエネルギーに圧倒されながらも一緒に落ち葉を拾い袋を一杯にしました。
 本校の位置する札幌市新川地区は、伝統的に地域と学校の結びつきが強く、これまで新川まちづくり
協議会、新川地区コミュニティーネットワーク会議、新川西中学校区青少年健全育成推進会などの会議
に、本校をはじめとする地域の学校が参加し、情報共有の他、地域が抱えている課題の解決に向けて協
働的に取り組んできました。2014年度からは「新川地区学校・地域連絡協議会」が組織され、地域連携
・小中高連携事業を推進してきました。地域の環境美化活動は、この事業の一環として行われてきたも
のです。
 その他の連携事業としては、北海道マラソン給水ボランティア、三校合同コンサート(新川西中学校
・国際情報高校)、雪かきボランティア、交通マナー標語作成、地域の危険マップ作成などがあげられ
ます。また、本校生徒会が主催しているものとしては、新川小学校と新光小学校の児童への「絵本の読
み聞かせ」事業があります。
 このように、地域に学びの場を提供していただき、地域とともに歩んできたのが新川高校です。今後
もこの連携・協働を大切にして、生徒の成長につなげていきたいと思います。
                                     令和4年11月24日
 

二兎を追う

 
 専門学校の推薦入試とAO入試、大学の学校推薦型選抜と総合型選抜の準備が佳境を迎えています。す
でに結果が判明している生徒もいますが、出願のピークは大体先週あたりで、数は減ったものの今週も
提出資料の点検や決裁に追われる毎日です。
 ちなみに、大学入試は2021年度入試から名称と中身が少し変わりました。名称については、これまで
の一般入試は「一般選抜」、AO入試は「総合型選抜」、推薦入試は「学校推薦型選抜」へと変更されて
います。
 出願書類の中に「志望理由書」や「自己推薦書」がありますが、そこには3年生の皆さんがその学校
・学科を選んだ理由と、将来の夢や展望が綴られています。提出の締め切りもあり決裁を急がなければ
ならないのですが、一人ひとりの思いが詰まった文章に引き込まれ、何度も繰り返して読んでしまいま
した。そして、これまで皆さんが良い出会いや気づきを得てきたこと、そこで芽生えた憧れを自分の未
来に結びつけようと取り組んでいる姿に、時を忘れて心地のよい気持ちにさせられていました。こうし
た3年生の思いに応えるべく、担任の先生方と進路指導部は、書類を作成した後も面接指導に取り組む
など、一人でも多くの合格を勝ち取れるよう支援に努めているところです。
 さて、最近Quiet Quittingという言葉を知りました。直訳すると「静かな退職」となるのですが、実
際に退職するのではなく、やるべき仕事はやるけれどそれ以上は頑張らないことを意味しているそうで
す。これは、アメリカで若い世代に急速に広がっている1つの社会現象で、仕事や職場のストレスに悩
まされてきたことや、頑張っても賃金が上がらないことが背景にあると考えられているようです。
 日本でも似たような変化が認められています。内閣府の「就労等に関する若者の意識調査」によると、
「仕事と家庭・プライベートのどちらを優先するか」について、「仕事よりも家庭・プライベートを優
先する」と回答した者が63.7%となり、平成23年度の調査時における52.9%よりも多くなったとのこ
とです。また、マイナビの学生調査でも、やはり「会社内での出世や起業など社会的な地位や名声を得
ることよりも、家庭を持つことや安定した暮らしを求めている」という結果が出ています。
 これは、かつて大人たちが「モーレツ社員」「企業戦士」と呼ばれ、家庭生活を犠牲にしてまでも仕
事に邁進してきた社会状況からの大きな揺り戻しといえます。仕事をセーブするという風潮には少々不
安を感じますが、考えてみればワークライフバランスをもって社会生活を送ること自体は悪いことでは
ありません。しかしこれが過ぎて、仕事を「給料をもらうための単なる労働」と見なす者が多数派にな
るとしたら、それは好ましい状況とはいえないと思います。人生の幸福は、私生活からだけでなく仕事
からも大いに得られるからです。
 せっかく努力を重ね叶える夢。将来たどり着くであろう職業。そこにやりがいや生きがいを見出し、
プライベートとともに前向きで意欲的に取り組めたら、一層充実した生活が送れると思うのです。3年
生の皆さんには、将来仕事の面白さを知って、二兎を追ってほしいと思っています。
 
                                     令和4年11月7日
 

審査を終えて

 
 今年度、北海道学校図書館協会の監査を仰せつかり、その業務にあたってきましたが、その延長で、
あろうことか青少年読書感想文全道コンクールの審査委員長を拝命することになりました。
 私は、典型的な理系人間なのですが、小学校の頃から読書も好きで、学校の図書館で本を借りては物
語に没入する喜びに浸っていました。幸いなことに下村湖人氏の「次郎物語」という名作に出会うこと
ができ、読書の面白さを知ったのがきっかけです。何事も動機づけが大切だと感じています。現在も、
鞄には常に文庫本を忍ばせている状況なのですが、感想文となると話は違ってきます。高校時代、宿題
として読書と感想文を課せられることに辟易とし、さらに「国語の成績を上げるために読書を」の指導
に反発し、気が付けば本を敬遠する日々が続いていました。楽しい読書が感想文をきっかけに苦役に変
わってしまったのです。暗黒時代から脱することができたのは、大学に入学して感想文から解放されて
からになります。
 そんな私に果たして務まるのだろうかという疑念を抱きながらも、先日、2回に渡る審査会に参加し、
無事に審査を終えることができました。読書離れ・活字離れやSNSの短文チャットの影響から読解力や
表現力の低下が指摘されている昨今、現代の子どもたちはいったいどのような感想文を書くのかと思っ
ていたところ、作品は見事な秀作ぞろい。しっかりとした構成に、豊富な語彙で巧みに表現した作品。
中には、口語調の文章もありましたが、等身大の自分をリアルに表現する上で平易な言葉がかえって効
果的だと思わせるような作品もあり、感心させられました。おそらくは推敲に推敲を重ねて言葉を紡い
だのでしょう。
 また、単なる感想や紹介に留まらず、本から学んだことや気づいたこと、自身と対峙し熟考したこと、
社会について考察するなど、「読書を通して変容していく自分」が描かれた作品などは、大変読みごた
えがあり、感想文自体が一つの物語に思えるような作品もありました。本を熟読し筆者の意図をしっか
りととらえるという土台があってこそ、見事に書き綴ることができたのだと思います。子どもたちの力
作を前に、感想文を敵視していた高校生の頃の自分が恥ずかしく思えた次第。今となっては、単に文章
を書くことが苦手だったと白旗を掲げるしかありません。
 さて、審査を終えて感じたのが、読書感想文には筆者のものの見方や考え方、洞察力、粘り強さ、創
造力といった様々な力が見事に内包されているということです。これらは学校での学習にとどまらず、
日常の経験などを含め多くの学びから得られたものであり、全ての作品から子どもたちの充実した毎日
が伝わってくるかのように感じました。
 本は人生に彩や導きを与えてくれたり、人格形成に大きく寄与するものだと認識しています。多感な
時期を過ごしている本校生徒にも、多くの素晴らしい本と出会い、自らの学びを深化させ、確かな成長
につなげてくれることを願っています。そのために、本校の図書活動の推進について検討を進めていけ
ればと考えています。                                                             
                                     令和4年10月26日
 

変化する学校教育

  
 先日、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)]が世界大学ランキングを
発表し、日本の大学では200位以内に東京大学、京都大学がランクインしました。しかし、東大は前回
35位から39位に、京大は前回61位から68位にランクを下げました。そして、これについて教育評論家
の尾木直樹氏が「日本で200位以内に入ったのはこの東大、京大のみ」と嘆き、「そもそも大学入試問
題からして世界から3周遅れ、孤立しています。学びのグローバル化の中で相変わらずの公平・公正さ
を求めた認知主義学力テストを実施して、その上位者から合格させる」と、その手法の古さをブログで
批判したことが報じられました。
 確かに、入学試験の結果が重視される日本の大学入試と異なり、海外では様々な合否判定の方法が用
いられているようです。例えば、アメリカでは「高校の成績」「自己紹介文」「推薦状」「課外活動」
の他、共通テストである「SAT」「ACT」の成績や面接の結果から判定を行っています。また、イギリ
スでは大学入試そのものがなく、義務教育終了時に「GCSE」という試験を受け、優秀な成績を残した
生徒が「GCE」という試験に向けた学校に入ることができ、そこで2年間勉強した後、「GCE」Aレベ
ルの試験を受験します。そして、この試験の結果や面接によって大学入学の可否が決まるとのことです。
 また、大学での授業の違いも指摘されています。教授が一方的に講義する日本とは異なり、海外の大
学では学生が自主的に発言するプレゼン形式や、テーマに基づいて議論を行うディスカッション形式の
授業が多いといわれています。そして、質問に対して具体例を交えながら自分の考えを論じるエッセイ
方式の試験もあるとのです。つまり、相手の意見を聞き自分の意見を述べるといったスキルを向上させ
つつ、専門性を高めるという学びが行われているということです。
 どの国の手法にも一長一短があり、安直に海外の真似をすればよいということではないと思いますが、
日本の教育や大学入試に大きな課題があることは確かです。このことから、文部科学省では、現在、高
校教育・大学教育・大学入学者選抜の一体的改革である「高大接続改革」を進めており、尾木氏が求め
ているレベルには程遠いとは思いますが、大学入学者選抜についても少しずつ前進しています。具体的
には入学者に求める力を多面的・総合的に評価する総合型選抜入試等の導入等があげられます。また、
高校教育改革については、新しい学習指導要領が今年の1年生から実施されていますし、GIGAスクー
ル構想に基づくICTを活用した学習が進められているところです。
 本校においても、授業改善、観点別評価(今年の1年生から)、総合的な探究の時間の新しい取組、
ICTの活用や、新しい大学入試への対応など、生徒の学びの向上と一人ひとりの進路実現に向けて奮闘
しているところです。今後も、大きな変化が続くことと思いますが、その都度、生徒・保護者の皆さん
と情報を共有していきながら本校の教育を推進していきたいと考えています。今後も、新しい学習指導
要領が目指すところの「社会の変化の予測が難しい現状を踏まえ、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら
考え、判断して行動しながら、答えのない問題に挑み、周りの人とも協力して解決できる力を身につけ
る」学びについて模索し、実践していきたいと考えていますので、ご理解とご支援をお願いいたします。
 
                                     令和4年10月14日
 

「人のために」のススメ

 
 9月30日に前期の終業式を行いました。コロナ対応のため、放送により実施することとしましたが、
1日も早く対面での全校集会ができることを祈っています。
 今回は、校長挨拶の中で下記のような話をしました。
 
 9月16日に校舎周辺清掃を行いましたが、256名の生徒が参加してくれました。現在、このような、い
わゆる「奉仕」とか「ボランティア」といったものが社会に広く浸透してきて、これまでよりもずっと身
近なものになってきました。何故このように定着してきたのか、その理由を調べてみたところ「社会勉強
になる」「人との交流ができる」「視野が広がる」そして「人の役に立てる」といったものが挙げられて
いました。そして、最後の「人の役に立つ」という文字に、つい目が止まりました。 
 というのは、最近「人の役に立つ」とか「人のために」というフレーズを頻繁に耳にするようになって
きたからです。例えば、ある世界的なロボット開発者は、高校生に向けて「どんなに技術的に優れていて
も、人の役に立たないものは作った意味がない」と語っていました。また、高い技術力で業績を伸ばして
いる、あるアメリカのベンチャー企業の社長が「お金をもうけたくて、ではなく人の役に立ちたくて頑張
っているうちに、こんな大きな会社になっていた」と述べていました。そして、スポーツの世界でも、
「楽しみたい」というコメントに代わって「応援してくれる人に喜んでもらいたい」とか、「感謝」とい
う言葉が聞かれるようになってきました。 
 人は「自分のため」よりも「人のため」に行動する方が、気持ちが前向きになったり、よりやりがいを
感じる分、最後まで頑張り切れると言われています。また、スポーツ心理学では「人のため」にとか「人
に支えられている」という心理状態は、勝負の局面でストレスやプレッシャーを軽減し、思わぬパフォー
マンスを発揮させる効果がある、という分析もなされています。 
 つまり「人の役に立つ」ことは、よく言われる「社会貢献」だとか「自尊心が養われる」だけにとどま
らず、「自分自身を成功に導く鍵」にもなりうるということです。誤解を恐れずに言うと「人のために行
動することは、自分の力を最大限に発揮する」ことにつながるということです。
 皆さんは様々なことを学び、日々多くのものを身につけています。これは、基本的には自分の進路や自
己実現のための取組です。しかし、そこで終わるのではなく、備わった力を社会や人のために発揮すると
いう次の段階を大切にしてほしいと思います。百聞は一見にしかず。どんな小さなことでも構いません、
人のために考え行動することを、思い切って実践してみてはいかがでしょうか。自分がどのように変容し
ていくのかを、是非、実感してみてください。
 ノーベル物理学賞を受賞した、アルベルト・アインシュタインが残した言葉に「成功する人になろうと
するのではなく、価値のある人になろう」というものがあります。彼もまた、富や名声ではなく、周りか
ら感謝や信頼を得ることに、成功の秘訣や人生の価値を見出した人なのではないかと思っています。
 
                                      令和4年9月30日
 

青春は密

 
 8月25日と26日の2日間、石川県で行われた全国高等学校PTA連合会大会に、PTA会長の海老田さん、
副会長の新タさん、川﨑さんの4人で参加してきました。新型コロナウイルス感染症の影響で対面形式と
しては3年ぶりの開催とあって、感慨深げに言葉を交わす参加者が会場のあちこちで見られました。
 参加した第一分科会では、"新時代の家庭教育"をテーマに慶応大学教授の中室牧子氏によるデータに基
づいた斬新な視点による講演と、花まる学習会代表の高濱正伸氏による型破りながら情熱のこもった講演
を大変興味深く聴かせていただきました。印象的だったのが、高濱氏が親と子の関わりについて、ルソー
のエミールを引用して「親は高校生の子どもにあれこれ細かく干渉すべきでなく、他者に任せてしまうの
が良い」と述べたことです。そして、「例えばこんな人に」ということで、夏の甲子園で初優勝を果たし
た仙台育英高校の須江航監督の名をあげていました。
 須江監督と言えば、あの感動的な優勝インタビューで、今や時の人となった感があります。「青春って
すごく密なので、でもそういうことは全部『だめだ、だめだ』と言われて、活動していても、どこかでス
トップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で、でも本当に諦めないでやってくれ
た」「本当にすべての高校生の努力のたまものが、ただただ最後、僕たちがここに立ったというだけなの
で、是非、全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」これは、高校球児だけでなく、コロナ禍に
もめげずに頑張っている全国の高校生に対する労いであり、私たち教育にたずさわる者の思いを代弁して
くれたスピーチだと思っています。
 8月21日に、本校の吹奏楽部による定期演奏会が札幌コンサートホールKitaraで開催され、1,500人以
上の観客を前に見事な演奏を披露してくれましたが、97名の部員の気持ちが一つになった演奏は、夏の終
わりを彩るべく心に深く残るものとなりました。キャプテン(部長)の和田さんが挨拶に立ち、様々な制
約がかかる中、苦労してきた3年間の活動を振り返り、演奏できることの幸せについて述べ、会場は大き
な拍手に包まれました。その時、この拍手を他の生徒達にも送ってあげたいと感じた私は、翌日の須江監
督の「是非、全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」の言葉に、深い共感を覚えたのです。
 演奏会の後日、キャプテンの和田さんが副キャプテンの椎名さん、玉田さんとともに、全道大会の報告
と定期演奏会のお礼に来てくれましたが、3人の間には苦楽を共にしてきた結束力と信頼感が感じられま
した。密集することは叶わなかった3年間ですが、その分、心の密接なつながりについて学び、身につけ
ることができたのではないかと思っています。また、この貴重な経験は、今後の彼女らを支える糧となっ
てくれると確信しています。
 
 さて、この度、学校紹介と学校長インタビューの動画が完成しました。札幌市立高校ポータルサイト
(https://ichiritsukoukou.jp/school-introduction/)に掲載されていますので、ご視聴いただければ幸
いです。特に、本校の受検を考えている中学生と保護者の方には、是非ともご覧いただければと思います。
 
                                      令和4年9月16日
 

ハレとケ

 
 先月、自宅でテレビを見ていたところ、ファッションモデルの冨永愛さんが、あるイベントの席で食生
活のことを訊かれ「ハレとケを作ることを心がけている。ハレの日はおいしくいろんなものを食べ、ケの
日は自宅で一汁一菜とか季節のものをシンプルにいただく」と答えていました。
 「ハレとケ」とは、日本の伝統的な世界観のひとつで、ハレ(晴れ)は祭などの「非日常」、ケ(褻)
は「日常」を表しています。そして、非日常を示す「晴れ」は、現在も「晴れ舞台」「晴れ着」「晴れ姿」
といった言葉として遺っています。世界で活躍している冨永さんであれば、毎日、超贅沢な食事をするこ
となど容易にできるのでしょうが、健康を保つためにあえてハレとケを心がけるあたりは、彼女の見識と
インテリジェンスの豊かさを感じるところです。
 このハレとケですが、学校教育の場においても大切にしたい視点だと思っています。例えばハレにあた
るのが学校行事や部活動等の大会、進路実現のための試験等で、ケにあたるのがハレに向けた地道な準備
や毎日の練習、学習等といったところでしょうか。生徒たちはハレの日の成功のために日常の取組を重ね
ていきます。そしてこれを支援するのが私たちの務めです。ただし、ハレの日の成功はあくまで目標であ
り、ケの日々で試行錯誤と粘り強く努力する姿勢を身につけさせ、その中で人格を育てていくことが教育
の目的です。ケがあってこその学校教育です。 
 さて、本校では夏休みが終わりましたが、登校初日にハレの日を終えた3年生二人が、それぞれの報告
に来てくれました。
 一人は書道部の秋本さんです。全国高等学校総合文化祭東京大会への参加と毎日書道展漢字2部門
「U23毎日賞」の授賞式の報告をしてくれました。毎日書道展は日本最大・最高峰の書道展の一つとされ
ていて、毎日賞とは最高賞にあたります。実は秋本さんは高校から書道を始めました。それも、書道の授
業での書きっぷりが顧問の目に留まり、少々強引に勧誘され入部したのだそうです。それからわずか2年
程での快挙。才能を見抜いた顧問も素晴らしいですが、短期間で23歳以下の頂点に上り詰めた秋本さんに
は驚嘆の一言しかありません。
 そして、もう一人が囲碁将棋部の木村さんです。全道囲碁選手権個人戦で準優勝し、囲碁の聖地である
日本棋院で開催された全国大会に出場してきました。決勝トーナメント(ベスト16)に進むためには、予
選リーグで3勝することが必要なのですが、木村さんは2勝を挙げたところで昨年度の全国準優勝者と対
戦することになり、惜しくもわずかの差で敗退したとのことでした。本当にあと一歩だったらしくし、報
告の際も率直に悔しさをにじませていました。5歳の頃からお父さんの手ほどきを受け、研鑽を積んでき
た大きな成果です。
 二人に共通しているのは、その取組に"力感"や"悲壮感"が感じられないところです。これは、二刀流の
大谷さんたちと同様、本当に好きで物事に取り組んでいる人の特徴です。努力することが、本人にとって
は苦労と感じていないということです。今後について尋ねたところ、二人とも迷うことなく「卒業後も続
けます」と明言していたのがその査証だと思います。おそらく、今回の結果は二人にとって単なる通過点
にしか映っていないのでしょう。これからも、さらなる高みに向かってケの日々を楽しんでほしいと思い
ます。 
                                      令和4年8月19日
 

学びのデザイン

 
 近年、本校は近隣の新川西中学校、新川小学校、新光小学校との連携事業を進めています。この事業は、
平成26年度に「新川地区学校・地域連絡協議会」を発足させ、4校の児童会・生徒会が連携していくつか
の活動を始めたことが源流となっています。当初は、地域の課題解決を図ろうとする自発的な態度の育成
を目指し、まちづくりセンターや町内会の協力を得ながらボランティア活動に参加したり、「元気になれ
る標語」「交通マナー標語」の募集を行うなどの取組を行っていました。現在では、新川西中学校と本校
の生徒が、新川小学校と新光小学校の児童に絵本の読み聞かせをしたり、4校の児童生徒で新川中央公園
と新光公園の落ち葉拾いなどを行っています。
 この連携事業の一環として、昨年度は本校生徒が小学生に勉強を教えることに挑戦しました。「学びの
デザイン」と称するこのプロジェクトは、他者に勉強を教えることをとおして、どのように学習に取り組
むことが自身の望ましい学びにつながるかを学習するものです。そして、今年度からは「探究」「キャリ
ア教育」の位置づけとして、この取組の準備から実施までを総合的な探究の時間の中で行うこととしまし
た。
 第一弾として、本校2年生が新川小学校と新光小学校の5年生に、算数の「奇数と偶数」を教えること
にしました。7月14日(木)と19日(火)の実施当日、新川小学校と新光小学校の他、本校の三か所を会
場とし、生徒と小学生が少人数の班に分かれて班ごとに授業を行いました。はじめは緊張して伏し目がち
だった小学生たちも、少しずつ打ち解けて「こういう数のことを偶数っていうんだよ」「じゃあこれは奇
数?偶数?」といった問いかけに、しっかりと応えるようになっていきました。楽しく、分かりやすい授
業をめざして、4月から準備してきた本校の生徒たち。班ごとに工夫した教材や教え方で授業を進めてい
きましたが、小学生たちの理解の早さと反応の良さに思わず笑みがこぼれます。「すごいね、じゃあこれ
は分かるかな?」中には理解が少し曖昧な子もいましたが、マンツーマンで粘り強く教える場面が見られ
ました。本校の生徒は、勉強を教えるという「探究」の他、異年齢とのコミュニケーション、他者の気持
ちになって考えるといった貴重な経験をさせていただくことができました。そして、授業終了後のキラキ
ラした表情から、双方にとって大変有意義な学びの時間となったことを確信しました。なお、この取組は
札幌市立高校ポータルサイト (https://ichiritsukoukou.jp/3093/) に掲載されていますので、ご覧いただ
ければ幸いです。
 授業を見学していたところ、小学校の先生から「この子たちにとって、新川高校の生徒さんは憧れの存
在なんです。目の輝きが違います」と光栄な言葉をいただきました。これからも、そのようにあり続ける
には何が必要かと、思わずあれこれ考えてしまいました。
 さて、この「学びのデザイン」ですが、10月と12月には本校1年生が英語の授業を行います。今回の実
施を踏まえ、さらに改良を加えていければと思います。また、今後は新川西中学校とも授業での交流など
ができないか、模索していきたいと考えています。
                                      令和4年8月2日
 

復活!新川祭

 
 7月7日(木)、8日(金)の2日間、本校の学校祭である「新川祭」を無事に開催することができま
した。今年度の新川祭には1つの大きなミッションがありました。それは、タイトルにあるとおり「新川
祭を復活させる」ことです。
 コロナ禍により、やむを得ず多くの学校行事を中止・縮小してきたこの2年間でしたが、学校祭につい
ては一昨年の新川祭は中止とし、昨年は1日日程の代替プログラムで実施しました。内容はクラス企画や
ステージでの発表は行わず、各クラスがビデオ作品を作成して学級ごとで視聴するというものでした。こ
の件については、昨年度の札幌市立高校プレゼンテーション大会で、本校の生徒会執行部2年(当時)の
牧真帆さんが発表していています。現在でも札幌市立高校ポータルサイト (https://ichiritsukoukou.jp/
2325/) で動画を視聴することができますので、是非ともご覧ください。
 大きな行事を中止・縮小することは、その後に大きな影響を及ぼします。計画・準備の資料は電子デー
タや紙データとして残りますが、毎年行われていた先輩からのノウハウの伝授、自身の経験といったもの
は一旦途絶えてしまいます。今年の新川祭は、コロナ対策を講じた上で例年のプログラムに戻す方針を掲
げましたので、1年時に新川祭が中止となり、2年時に代替プログラムを実施した今年の3年生は、全て
が初めての取組となります。もちろん1、2年生も同様です。また、運営にあたる生徒会執行部、学校祭
実行委員会、放送局の生徒にはさらなる重圧がかかります。
 果たしてどこまでやれるものかという、生徒会担当や担任の先生方の心配をよそに、準備期間中、生徒
は手探りながらも楽しんで準備を進めていました。そして、新川祭当日を迎えましたが、準備が甘かった
り予想外のことが起きてしまい、時間を超過したり、対応のために体育館内を猛ダッシュする生徒たちが
見られました。しかし、周りと連携し、終始和やかに、そして臨機応変に対応する生徒たちの姿は頼もし
いの一言です。本校のカリキュラムポリシーに「0から1を創り出す学び」というものがありますが、生
徒たちはこれを見事に実践してくれたと思っています。
 感染対策のため、生徒は体育館と講堂に分かれてのステージ発表、そして一般公開なしの形で実施しま
したので、完全な復活とは言えないかもしれませんが、生徒の奮闘のおかげで、基本的な部分は見事に復
活させたといえます。生徒の皆さん、お見事!また、生徒の取組を陰ながら支えてくれた先生方に感謝し
ます。
 来年こそは、保護者を始め多くの方に来校していただき、本校生徒の創意とエネルギーに触れていただ
けたらと思っています。新型コロナの収束を願ってやみません。
 
                                      令和4年7月21日
 

野球観戦記

 
 6月は例年より雨の多い月となりました。これは、本来ならもう少し本州に居座るはずの梅雨前線が、
太平洋高気圧だけでなくチベット高気圧と偏西風の影響により、異例の早さで北に押しやられたことが原
因のようです。また、このことにより、九州南部では統計史上最短の梅雨明けとなり、反対に北海道は
「いわゆるえぞ梅雨ではなく本物の梅雨に近い」(日本気象協会北海道支社)状況になったとのことです。
7月に入ってからは、一転、暑い日が続き、うんざりしながらパソコンに向かっているところですが、そ
んな私をしり目に、生徒たちは実に溌溂な毎日を送っています。若さには雨も暑さも吹き飛ばすエネルギ
ーが備わっているようです。私たち職員も負けていられません。
 さて、前置きが長くなりましたが、今回は野球の話です。
 南北海道大会の札幌支部予選が始まり、初戦を快勝した本校の野球部が、ブロック準決勝で私立の強豪
校、立命館慶祥高校と対戦することになりました。7月3日(日)の試合ということもあり、全校応援の
可能性も探りましたが、その日の部活動や特に学校祭準備への影響を考慮し、自主応援という対応にしま
した。
 当日は、晴天の麻生球場に90名程の生徒が集まってくれて、野球部父母会の皆さんと一緒に3塁側スタ
ンドに陣取りました。選手たちは、試合前から普段どおりの落ち着きを見せ、ウォーミングアップも淡々
とこなしていました。顧問の先生からは、事前に「直近の練習試合では好調で、チームとしての調子が上
がってきている」と伺っていたこともあって、期待感を膨らませて試合開始を迎えました。
 始まってみれば、4回裏終了時点で何と4対1のリード。2回表には本校の4番打者がライナーでレフ
ト外野席を越えていく先制のソロホームラン。3回にも本校2本目のホームランが飛び出しました。守っ
ては、本校ピッチャーが要所を抑える粘りのピッチングを披露。そして、野手は無失策という序盤の完璧
な戦いぶりに、スタンドからは大きな拍手。声援も送りたいところでしたが、感染対策のため禁止されて
いました。ところが、5回裏に相手による2本の長打で2点を失い、6回にはエースが降板し、代わった
2番手ピッチャーも打たれて、ついに逆転を許してしまいました。それにしても、中盤からの立命館慶祥
は集中した見事なプレーが続きました。こちらの得点を阻む見事な中継プレー。2ストライクからのスク
イズ敢行も、相手ピッチャーは冷静にボールを一塁側に外し三振ゲッツーに。やはり強豪校だと思わせる
プレーがいくつも見られました。敵ながら天晴です。そして、このスクイズですが、スタンドの教員席で
は「ビッグボスなら、ここでやるでしょう!」と勝手に盛り上がっていたこともあり、思い切った作戦に
も「よくぞ」と皆ポジティブな反応を見せていました。
 試合は最終的には5対7で敗れてしまいましたが、敗戦ムードの中で8回に1点を取り返したこと、9
回2アウトの場面でも、しぶとくヒットを打つなど、選手たちの諦めない気持ちが伝わってくる大変見ご
たえのある試合でした。選手の皆さん、ナイスゲーム。
 球場に足を運べなかった方々も含め、応援していただいた関係者の皆さん、ありがとうございました。
 
                                      令和4年7月11日
 

学びの場

 
 前回、本校の部活動に関わり壮行会や各種大会の結果についてお知らせしましたが、その後に行われた
大会についても、引き続き報告させていただくことにします。
 まず、高文連の石狩支部発表会に出場した吹奏楽部ですが、10月に行われる全道大会に進むことが決ま
りました。そして、全道大会に出場した各部について、弓道部(男子)が団体3位、ハンドボール部(女
子)がベスト8、ソフトテニス部(女子)が団体ベスト8となりました。また、ダンス部と放送局(テレ
ビドラマ部門1位、研究発表部門4位)は全国大会に出場することが決まりました。
 毎年の事ながら、生徒達の努力がこのような成果となって表れていることに敬意を表するとともに、真
摯に取り組んでいる本校教員と生徒を誇りに思います。何といっても生徒自身が主体的に考え行動し、仲
間と協力して大きなミッションに取り組んでいる様子から、あらためて学びの場としての部活動の尊さを
感じているところです。部活動の地域移行が進められようとしていますが、良い着地点が見つかってくれ
ることを願っています。
 さて、先日、女子ソフトテニス部の部長さんと副部長さんが、校長室を訪ねてくれました。全道ベスト
8の報告に来てくれたのですが、大会が行われた旭川の銘菓をお土産に貰い、感激してしまいました。彼
女らの真っ黒に焼けた顔を見て、思わず「焼けたねぇ!」と声をかけると、はにかんだ笑顔の中にも、1
つのことを成し遂げた達成感や自信といったものが感じられました。3年間で多くのものを身につけたこ
とでしょう。
 思い返せば5月の支部予選、彼女らは全道大会の出場権をかけた代表決定戦で窮地に立たされていたの
でした。1勝1敗で迎えた第3ダブルスは序盤にミスが重なり、あっという間に0-3のスコアに。あと
1セットを失えば敗退という場面から、我慢のテニスを展開し、最後はようやく自分達のペースに持ち込
むことができました。そして、終わってみれば4セット連取の4-3で大逆転の勝利をおさめたのでした。
全道大会ベスト8の裏には、こんな大きなドラマがあったのでした。たまたま、当番校業務で会場に居合
わせた私は、幸運にもこの劇的な場面を目にすることができたのです。
 勝負事は紙一重。練習量、練習の質、技術力、気力、体力、運など、ほんの少しの差が明暗を分けるこ
とがあります。支部大会の1回戦で敗退した中にも、そこで勝っていれば、その後全道大会の上位に進む
ことのできたチームがいくらでもあると思っています。そして、その少しの差のために、各チームが日々
しのぎを削っています。
 生徒の成長ぶりを見るにつけ、こうした貴重な学びの場面をいかに創出できるかが学校教育の鍵だと考
えています。現在、本校は学校祭に向けての準備期間です。これも大切にしたい学びの場です。
 
                                      令和4年7月1日
 

さらなる活躍を

 
 新型コロナウイルス感染症の対応で様々な制約がある中でしたが、高体連と高文連の支部大会(高文連
については一部の大会)が、無事に終わりました。
 今年も本校の生徒は大いに活躍して、テニス部、バドミントン部、ソフトテニス部、陸上競技部、剣道
部、弓道部、ハンドボール部、放送局が全道大会に出場することになりました。また、囲碁部はすでに全
道大会が終了し、全国大会へ出場することが決まりました。なお、書道部については昨年度の内に今年度
の全国総文祭への出場が決まっています。
 惜しくも支部大会で敗退した生徒の皆さんも、よく頑張りました。これまで、皆さんが高い意識を持ち、
真摯に取り組んでいる姿を見てきました。悔しい思いをしたかもしれませんが、研鑽を積んできた経験は、
間違いなく今後を支える大きな糧となってくれることでしょう。本当にお疲れさまでした。
 さて、今週、全道大会に向けて放送による壮行会が行われました。支部代表として次の戦いに臨もうと
している生徒に、どのような言葉をかけたらよいか、あれこれ考えました。すると、私がかつてテニス部
顧問を務め、悪戦苦闘していた頃を思い出しました。技術面はもちろんですが、大きな課題としてメンタ
ルの強化がありました。試合前から諦めている選手、ミスを引きずったままプレーする選手、いつもと違
うプレーをする選手。どうすれば勝たせてあげられるだろうかと、メンタルトレーニングに関わる本を何
冊も読み、試行錯誤を繰り返しました。たどり着いたのが「勝つ」ことではなく、「持てる力を発揮する」
ことに意識を向けさせることでした。
 そこで、思い切って次の言葉を伝えることにしました。
 
  皆さんは、負けます。
  最後に勝ち残れるのは、全国でたった1人、または、たった1チームだけです。
  だから、十中八九、途中で負けます。 
  だから、負け方を考えてください。
  相手を恐れ、勝負を諦らめたまま戦い、負けるのか。
  試合中のミスを悔やみ、そのことに気を取られたまま戦い、負けるのか。
  皆さんは、どうせ負けます。
  どうせ負けるなら、最後まで胸を張って、大胆に戦ってください。
  どうせ負けるなら、自分と仲間を信じて、強かに戦ってください。
 
 ネガティブな言葉を使ったことが気になるところですが、生徒の皆さんには真意が分かってもらえると
信じています。勝ち負けはあくまで結果です。勝ったことそのものではなく、勝利を目指して最善を尽した
ことにこそ、より大きな価値があると思っています。
 皆さんの、さらなる活躍を祈っています。
                                       令和4年6月10日
 

流転の海

 
 作家、宮本輝さんの自伝的大河小説「流転の海」シリーズを読了しました。
 テルニスト(宮本ファン)の皆さんからは、「何をいまさら」とお叱りを受けるでしょうが、何せ執筆
開始から37年かかって完成した全9巻の大作です。実は、10年以上前に第6巻まで読み終えていたので
すが、次作の刊行を1年、2年と待っているうちに、この作品から気持ちが離れてしまったのです。その
ため、平成30年にシリーズ完結の報を聞いた際も、書店に足を向けることはありませんでした。しかし、
やはり心のどこかで気になっていたことと、あるきっかけにより、あらためて第1巻から読んでみようと
思い立ちました。そして、ページをめくり始めたところ、あっという間に全作を読み終えてしまった次第
です。
 私の稚拙な感想を披露することは避けますが、印象に残ったのが第8巻のあとがきです。いよいよ最終
巻を残すのみとなった段に至り、筆者はどこにでもある死と失敗と挫折を延々と書き続けてきただけでは
ないのかという無力感に苛まれたことを吐露しています。しかし、そのおかげで書こうとした原点に立ち
返ることができたとも述べています。その原点とは下記のように綴られています。
 どこが始まりでどこが終わりなのかわからない長い長い川の畔を旅していて、疲れ果てて倒れ込んでし
まうときがあっても、そこには毒虫もいれば菫も咲いている。そのどちらと出会うかは「運」ではない。
「意志」である。(後略)
 この一節を読んだときに、4月の始業式で私がマハトマ・ガンジーの言葉「明日死ぬかのように生きろ、
永遠に生きるかのように学べ」を引用し、「思考力や精神といったものは、生涯、成長することができる。
そのためには、学び続けることだ。」と生徒に語ったことを思い出しました。宮本さんは、出会うのが毒
虫か菫かを決めるのは本人の「意志」であると説きましたが、その「意志」を作り上げている土台こそ
「学び」であると感じたのです。
 長い人生では、幸せなひとときもあれば苦難の時期もあります。しかし、他力本願に陥ることなく、少
しでも幸運を引き寄せ、自分の意図する方向に身を進めるためには、学びを重ね、そこで得たものを充分
に活用することが必要不可欠です。
 本校は、教育の目的として「自ら学び得る人と為す」(=自立した学習者)を掲げています。高校生活
のあらゆる場面で、学ぶことの意義や学びに向かう姿勢を身につけ、倒れ込んだ先でも菫と出会えるよう
な生徒を育てていきたいと思います。
                                      令和4年5月31日
 

 心の育成と支援

 
 これまでの教員生活で、心理面の不調から登校できなくなる生徒を数多く見てきました。私自身も、担
任として面談や家庭訪問を重ね懸命にアプローチしたものの、結果として生徒が学校を去るという経験を
しました。生徒が心ならずも不登校になったり、休学・退学するという事態は私たちにとって痛恨以外の
何ものでもありません。
 心理面の不調といっても、その具体は千差万別です。若い世代の心理状況を知る手がかりとして、日本
を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした内閣府の意識調査「我が国と諸外国の若者の意識に関
する調査」がありますが、これによると日本の若者の自己肯定感や意欲の低さ、諸外国と比べて憂鬱だと
感じている者の割合が高いことが示されています。そして、若者の心のサポートに携わっている方々の中
には、メンタルの問題の多くが自己肯定感が低いことに起因することを指摘する声があります。
 自己肯定感の低さについては、譲り合いという日本特有の文化の下で身についた謙虚さが自身の肯定を
躊躇させるためだという分析や、成功体験が少ないこと、コンプレックス、また、他者と比較された負の
経験に起因するという研究結果があります。では、自己肯定感を高めるための方策はというと、自己表現
や自己主張の力を育むためのコミュニケーション機会の確保や多様性を重視し長所を伸ばすことなどが有
益とされています。あたりまえかもしれませんが、心の支援と心の育成は表裏の関係ということなので
しょう。
 新川高校は近年、地域や小中学校との連携事業を推進しています。また、伝統的に部活動や学校行事が
大変盛んです。生徒はこれらの活動をとおして、異年齢の人と関わったり、相手の話を聞き自分の意志を
伝えるなど、多様な考え方に触れ自分を再確認する経験を積んでいきます。これらは自己肯定感を育む観
点からもメリットのある取組と言えます。
 また、本校では生徒の悩みや困りごとに対して、担任、教育相談部、養護教員、スクールカウンセラー
が相談を受ける通常の体制の他、有志の先生方が気軽に相談に応じる「新川おたすけ隊」の取組があり、
全校体制で生徒のサポートにあたっています。ちなみに、私も「おたすけ隊」の一員に加えてもらってお
り、微力ながら生徒の支援に貢献したいと思っています。
 私が本校に赴任して最初に感じたのが、生徒が元気で学校に活気があふれているということです。例え
ば、廊下では気持ちのよい挨拶が交わされ、体育の授業では仲間に声援を送る場面が見られますが、これ
らは標準的な本校の風景です。こうした生徒の様子を見るにつけ、本校の教育の成果を実感するとともに、
今後の新川高校の学びと子どもたちの成長について思いを巡らす毎日です。
 今年度、札幌市は子どもの学びや成長を支える学校教育重点の基盤として「人間尊重の教育」を掲げま
した。今後も、子どもに寄り添いながら成長を促すことを念頭に、本校としての人間尊重の教育を進めて
いきたいと思います。
                                       令和4年5月13日
 

学校長挨拶

                                   第17代校長  矢田 春義  
 
 本校は、昭和54年に「北海道札幌新川高等学校」として開校した、普通科としては札幌市立5校目の高
校となります。開校以来、初代校長の武井時紀先生が掲げた「開拓者たれ」という校訓の下、豊かな人間
性を育み、21世紀の開拓者となるべき逞しい生徒を育てる教育を実践し、これまでに15,000名を超える
卒業生を輩出してきました。平成30年には更なる発展を目指して、校名が「市立札幌新川高等学校」に変
更されました。
 本校の特色としては、キャリア教育を推進するための「フロンティア・エリア制」という独自の教育課
程が挙げられます。この教育課程により、1学年は「発見する1年」、2学年は「探究する2年」、3学
年は「実現する3年」と位置づけ、進路に応じた学習を段階的に強化し、生徒一人ひとりの進路実現を推
進しています。
 授業以外では、北海道大学や小樽商科大学などへの訪問をはじめ、札幌市立大学看護学部の講義への参
加や、大学から講師を招き、授業を体験する上級学校セミナーなどの高大連携の取組を実施しています。
その他、地域や札幌市のボランティア活動に参加したり、現在は新型コロナウイルス感染症の影響で中止
していますが、シンガポール、マレーシア、カナダ、オーストラリアへの海外研修を実施してきました。
そして、何より文武両道の精神のもと、毎年9割もの生徒が部活動に参加し、これまで多くの部・局が全
道大会や全国大会に駒を進めてきました。
 また、昨年度は『ICTを活用した「学ぶ力」の育成に係るモデル研究校』として、ICTを活用した授業を
展開し、他の市立高校に対しても指導的な役割を果たすなど効果的な活用に尽力したことや、隣接の小中
学校と交流し、評価方法等について教員同士が理解を深めたり、本校生徒が小学生に読み聞かせをするな
どの取組が評価され、札幌市教育実践功績表彰を受賞しました。
 このような本校の学びをとおして、生徒は学校行事にも積極的に取り組み、粘り強く挑戦する意欲と行
動力、自ら学び続ける意欲、自他を思いやる態度を着実に身に着けています。
 今後も、現状に甘んじることなく、さらなる飛躍を目指し、教職員一同が生徒の学びと成長の支援に努
めていきます。
 同窓会及び保護者の皆様、そして地域の皆様におかれましては、生徒を温かく見守っていただくととも
に、本校の教育活動になお一層のご協力・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
  
                                      令和4年4月14日