IDUその1
IDU? 開成では、アルファベット3文字をよく使います。異動してきた当初は、ALT、PLTなどアルファベット3文字が何を表しているのか、こんがらがって大変でした。特に、PLTは、PTLというほうが耳になじんでいて、いつも間違えておりました。コロナ禍の前の2019年にUTMBという大会に出場しましたが、出場したカテゴリーではありませんが、3人1組で300キロを走るPTLというカテゴリーがあり、過去に北海道からも出場したチームの話を北大近くの秀岳荘で聞きたことがあります。1人でも過酷な距離を3人のチームで行う、想像を絶するレースです。他のカテゴリーは上位10人だけが表彰台に上がれますが、このPTLだけはゴールした全てのチームが表彰台で祝福を受けます。そんなPTLが耳に残っていて、いつも言い間違えていました。
さて、現在の学習指導要領に「教科横断的な学習」という言葉が記載されております。社会では、単一の教科の知識を使って課題解決を図ることはほとんどなく、複雑に絡み合っている課題に対し、様々な知識や方法を駆使してその解決を図っていこうとするのが現状です。ただし、現在の学校の授業では、数学は数学、理科は理科の領域の中で学びは進められているため、狭い領域での学びになってしまっています。
そのような課題を単一の教科だけで解決するのではなく、様々な教科の知識や方法を駆使して、課題解決を図ろうとするのが教科横断的な学習といわれるゆえんです。開成では、これを「学際的な取組」としてSSHやIBでその取組を進めています。
岩浪国語辞典第六版によると、「学際」とは、「二つ以上の学問の境界領域にあること。いくつかの分野にまたがって関連すること。interdisciplinary の訳語として「国際」にならって1970年ごろ造られた語」と記されております。
開成は、令和4年度に文部科学省からSSHの第3期の指定を受けておりますが、今期の研究仮設の中に、「学際的な取組」を盛り込み、「一つの教科内の分野学習だけではなく、異なる教科間での分野学習や、分野を超えたテーマを扱った授業を展開する」こととしており、これらの学習は複雑な問題に対して幅広いものの見方を促し、深い分析や統合を可能にするとともに、通常の授業では得られない専門分野の概念を用いて問題提起や解決ができる生徒を育むとしています。
MYPにおける学際的な学習は、二つ以上の確立された専門分野の概念、方法、またはコミュニケ―ションの伝達様式を統合し、新しいものの見方を構築することを目指しています。学問分野を関連付け、一つのアプローチでは思いもよらない方法で、新たな理解を構築したり、作品を生み出したり、実社会の問題に取り組めるようにするものです。学際的な単元―interdsciplinary unit から、「IDU」としています。
IDUの原点となるべきものが高校であった札幌開成高校から始まっていました。SSH第1期指定のときから「コラボ授業」と名を付け、教科ごとの断片的知識を有機的に結び付ける授業を行うことにょり、生徒の知識や理解を深めることを目的として、複数の教科の教員が同一のテーマで一つの授業を進めておりました。
札幌開成高校時の「平成24年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告書・第5年次」には、次のような実践例の記載がありました。
「古典×地学」 テーマ:桜島大正噴火から学ぶこと
内容:石碑の碑文を読む
担当:国語の教員及び理科の教員
授業展開(50分)
①石碑の紹介・碑文を教材用の古典形式にしたものを配布
「科学不信の碑」の紹介
②教材として碑文を読み解くグループワーク
碑文(記録)に用いられている文法の学習
③国語の教員による解説
実体験に基づく碑文であること、表現者の意識の強さ等について
④理科の教員による本文中の火山活動の解説
噴火の経緯や主な火山活動、当時の噴火の様子
⑤火山被害に対する取組・防災活動の紹介
東日本大震災での津波被害を残そうとする取組の紹介
昨年度からの準備を経て、今年度、MYPの生徒を対象として、8セッション(16時間)分の授業を使って、IDUの取組を行うこととしてしており、すでに9時間分を実施したところです。
今年度、実施したIDUの様子については、すべて終了した後に、「IDU その2」でお伝えします。
令和6年(2024年)8月22日
校 長 宮 田 佳 幸