卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは今、高校卒業という大きな節目にあって、高校三年間のいろいろな出来事が、まぶたに浮かんでいることと思います。楽しいことも、時には厳しいこと辛いことも、きっとあったことでしょう。様々な学習活動、部活動や学校行事、友との語らい、これらのすべてを通じて、皆さんのものの見方や考え方が深まり、進みたい方向を探りながら自分の世界を広げてきたことと思います。

この三年間の学びは、皆さんが、これから自らの持てる力を発揮して、自分や自分の周りの人が生きるしあわせな未来社会を築いていくための練習であり準備でした。三年間、皆さんは本当によく頑張ったと思います。第60期の皆さんは、様々な個性を持つ仲間と、互いに認め合い、時に助け合い、学び合って成長してきました。皆さんのそのような姿を私は大変うれしく、誇らしく思います。そして同時に、皆さんが互いに認め合い学び合っている姿から、私たち教職員もまた、多くのことを学ぶことができたと感じています。皆さんに深く感謝したいと思います。

皆さんがこれから大人になり、社会で向き合わなくてはならない課題は、どこかに正解があって、それを知っていて憶えていれば丸をつけてもらえる、というものではありません。あらかじめ決まった答えがないのはもちろん、答えは一つとは限らない、それどころか何が課題かもはっきりしないところから、道筋をつけていかなければならないこともあるでしょう。しかも、立場や価値観の異なる人々と協働して、それらに取り組んでいくことが求められます。これからそのような社会を生きることを、不安に思うひともいるかもしれません。しかし、そこで大切なことを皆さんは高校時代にちゃんと練習しています。皆さんにこれからも大切にしてほしいことを三つお話しします。それらは、これまでの高校生活で練習してきたことの延長でもあります。

一つ目は、学ぶことです。学校を卒業して社会に出てからも、学ぶことは生涯続きます。その時に大事なのは、教わったり本で読んだりしたことを憶えておくだけでなく、自分で考えながら使ってみることです。高等学校三年間の学びで、皆さんは、先生から教わったり、自分で調べたりして知識を得て、その知識を使って、課題の解決に向けて学びを深めることに取り組んできたはずです。授業での探究的な学びやサンライズタイムでの個人課題研究が、その練習でした。これからも、目や耳を開いて学び続け、新しい世界を知り、そこに飛び込んで自らチャレンジし続けてください。

二つ目は、友との絆、他者への思いやりや敬意など、人とのつながりを大切にしてほしいということです。皆さんは、三年間の高校生活で、部活動や学校行事、日々の生活の中で、よき友を得、仲間とともに力を合わせて何かをなし遂げる喜びを知り、他者への思いやりや敬意を持ち、時に対立や諍(いさか)いもくぐり抜け、他者に対して自分を開くことや、失敗や過ちを互いに許すことも学んだと思います。人は、家族や、仲間や、あるいは顔も知らない人たちと、社会をつくって生きています。社会とは、人々がお互いに支え合って生きていく仕組みです。社会の単位は、身近な人間関係から国家や世界にいたる大きなものまで様々ですが、社会で何かをしようとするとき、一人で完結できることはありません。必ず他者との協働が必要です。多様な人々の中で、相手を認め、思いやりや敬意を持ち、互いに信頼し、協働することに喜びを感じて、人は社会を営んでいます。皆さんは、いろいろな個性を持つ仲間とともに過ごした三年間で、人と繋がる喜びを知る人になってくれたと思います。社会でも家庭でも、あなたに会えてよかった、と思える人と出会うこと、自分が誰かにとってのそういう人になることは、間違いなく大きな幸せです。それは自分自身の生きる喜びであり、自分を勇気づける力にもなります。

三つめは、「志」を持つことです。志とは、自らの意志をもって、このようにしたい、このようになりたい、という、目指すところに向かって進んでいこうとする気持ちです。「こうありたい自分」や「こうありたい社会」という目標があって、そこに近づく努力をしていれば、たとえ進むのが遅くても、たとえ周りの人がすぐに理解を示してくれなくても、いつか自分の願う幸せな人生と幸せな社会に近づいていけるものと思います。志を持つことは、皆さんの人生を豊かな幸せなものにすると同時に、未来の社会全体の幸せにも繋がるものと思います。

「学びて時に之を習う、亦た説(よろこ)ばしからずや。朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや。人知らずして慍(いきどお)らず、亦た君子ならずや」これは「論語」の冒頭の章句です。有名な言葉で、国語の教科書にも必ずといっていいほど載っている言葉です。これはまさしく今お話しした三つのことを言っています。ご存じのように論語は約2500年も前の中国の古典ですが、現代に生きる私たちも、そこからいろいろな示唆を得ることができます。未来は常に曖昧で先の見えないものであり、時に進んでいくのに不安を覚えることもあるかもしれませんが、これまで学んできたこと練習してきたことに自信を持ち、先人の知恵からもヒントをもらい、仲間とともに進んでいけば、恐れることはありません。

これから社会にはばたいていく皆さん、どうか、学び続け、人とのつながりを楽しみ、志を持ち、精一杯自分の願う生き方を模索してください。そして、みんながしあわせな未来社会を築いていってください。

 

保護者の皆様、お子様の高校ご卒業、誠におめでとうございます。今日までの十八年間、深い愛情をもって育んでこられたお子様の成長を振り返る時、そのお喜びはいかばかりでありましょうか。三年間、本校の教育活動に、皆様の深いご理解とご支援を賜り、本日に至ることができましたことに、心より感謝申し上げます。

併せて、この度の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策として、変則的な形での卒業式実施となりましたが、保護者の皆様のご理解とご協力に厚く御礼申し上げます。

 

最後になりましたが、卒業生の成長を見守りご支援をいただきました紫雲会、紫水会、近隣地域の皆様をはじめ関係の皆様に心より感謝を申し上げ、私の式辞といたします。

 

令和2年3月2日

市立札幌旭丘高等学校長  林 恵子